文 | ナノ

日曜日。
蒼空は織田家に遊びに来ていた。
週間課題を終わらせた市と蒼空は市の部屋でお茶を飲みながらのんびりした午前中を過ごしていた。



「蒼空…」


「お市ちゃん、どうしたの?」


「あのね…市、蒼空にね…」


「うんうん」



もじもじ指を動かしながら市は何かを蒼空に伝えようとする。
蒼空は決して急かすことなくにこにこしながら続きを待っている。
蒼空のこんなところが市は大好きだった。



「あのね、市…お友達ができたの…だから…蒼空にも紹介したい、の…」


「お市ちゃん…!」



市が言い終えると蒼空はバッと口元を両手で覆った。
その様子をみて市の思考はマイナスになる。
が、がしっと両手を握られたことにより意識がそらされた。



「嬉しい!お市ちゃんにお友達できて!私もね、お友達できたんだよ!ちょっと変わってるけど」



お市ちゃんにも紹介するね、と笑う蒼空につられて市もはにかんだ。



「でも最初にお市ちゃんのお友達紹介して欲しいな!男の子?女の子?」


「女の子…市は白い鳥さん、って呼んでるの」


「白い鳥?ちゃん?」


「うん…」



変わったあだ名だが市が変わった呼び名で呼ぶのは良くあることなので蒼空も大して気にしない。



「とても…元気で、市のお話、ちゃんと聞いてくれるの」


「そっか〜」



長政や家族といる時の安心しきった笑顔とは少し違うが楽しそうな雰囲気を出す市に見ている蒼空も楽しくなってきた。





+白い鳥+



(今から遊ぶ約束、してるの…)

(そうなの?いってらっしゃい!)

(蒼空も…)

(え、私も?)

(白い鳥さんも蒼空と、お友達に…なりたいって)

(ホント!?嬉しいな!)

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