大学が地元から離れた俺は、合格が決まると同時に、引っ越し先を探した。
俺はかなり早い段階で推薦が確実だったので(もちろん剣道だ)、まだ空きのある良い物件がかなりあって、その中でも多方面に便が良いこのマンションを選んだ。

そしてこのマンションでは、ルームシェアというものを行っている。
早く言えば、何人かで部屋を共用しましょう、というもので、だから部屋も一人では広すぎるくらいの大きさがある。

そこで、たまたま俺は土方さんと同じこのマンションを選んで、たまたま一緒の部屋に割り振られてしまった。
それだけ。

一緒に住みはじめて1ヶ月、家事は全て土方さんが担当することになって、とにかく、俺としては願ったり叶ったり。


「ほら、ネクタイよこせ」
「ん、」
「明日から自分でやれよ」
「無理でさ」
「即答すんな!」

ふと顔を下に向ければ、シュルシュルと器用にネクタイを結ぶ土方さんが思ったより近くて、いやに心臓が跳ねる。

黒い髪も、人を殺せそうな瞳も、何も変わっていないのに。

何も、

変わっていない、から


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