「…そうご」
「は?」
「俺の名前」
「…はぁ。うんまぁ、知ってるけど?」
「っだから、」
言いながら立ち上がり、土方さんに背を向ける。
こんな顔、見せられたもんじゃない。どんな顔なのか自分ではもちろん分からないのだけれど、きっと、情けないそれに決まっている。
というか、ここまで言ったら分かれよ土方。
「……そうご、で、いいです」
まぁアンタなら呼んでもそんなに嫌な顔しないであげますよ、くらいの声で告げた
つもりだった。
実際には、ふるり、震えながら言ってしまったものだから、たまったもんじゃない。
とっさに訂正しようとして、しかしその一瞬前に、ポンと頭に手が置かれる。
土方さんの手、なんだか煙草くさい。
そうしてから、ひょこりと顔を覗かせて、目を合わせて。
「…分かった。総悟な」
なんて、何だか嬉しそうに言うものだから。
思わず(と言っても土方さんは信じなかった)土方さんの足を踏みつけて、そのままの勢いで走り出した。
振り返ってみれば土方さんは悶絶していて、しかし、阿呆土方!と言えば元気に追いかけてくる。
「てめっ、待ちやがれ総悟!!」
いやですよ。
だって追いかけている間は、貴方、俺の名前、呼んでくれるから。
幾度も呼ばれる名前にこっそり微笑んだのは、俺のみぞ知る、トップシークレット。