「は、お前、結構つえーのな…」
「馬鹿にしねーでくだせェよ」

身が清められるような夜の風にあてられて、不意に目があって、どちらともなく笑いだす。
結局試合は五分五分で、まぁ辛うじて、わずかな若さでもって、俺が勝ったわけなのだけれど。
それにしても。

(予想外だ…)

思ったのは、二人同時。
強い。そして、そう、楽しかった。
自分が繰り出した技を、一々、普通は考えつかない技でもって返してくる。
楽しかった。
それはとても、久しぶりの感覚だったから、嬉しくて。

「疲れたー」
「おいぃ!俺より先にへばんなよ、10代」
「土方さん親父くさーい」

うるせぇよ!という返事も適当に聞き流して、縁側の心地よさに、暫し目を瞑って浸る。

さわさわ、と、草の先を撫でるような風が吹いている。
その柔らかそうな草のどこかで、虫が鳴いているらしい。
リリリ、リリリ、としきりに聞こえるから。

土方さんも空気を読んだらしく黙っていて、その空間が、驚くほどに、心地よかった。

だから

「……沖田?そろそろ中に戻んねーと…」
「うん。…あの、さ…」


だから、

ちょっとくらいなら。

心を許してやっても、いいかなーって。


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