(…ムカつく)

丸くて大きな目も、色素が薄いのかなんなのか茶色い髪も、俺の最大のコンプレックス。
ちなみに、それに次いで、伸びない身長と未だに華奢だと言われるガタイがくる。

あんな風に、いかにも剣道できます!みたいになりたかったなぁと思って、気付けば、その黒い瞳が自分を見つめていた。

「…何です」

後ろで、早くも道場に上がった永倉らが素振りを始めたのを感じながら、少々ムッとしてその視線にこたえた。

「いや…お前さ、」
「何」
「…よく女と間違われ」
「近藤さん!審判してくだせェ!」
「…へ?ぇ、ちょ、まっ」
「勝負でさぁ土方ァ!フルボッコにしてやりやすぜ!」

一番踏まれたくない地雷をピンポイントで踏まれた。
一番踏まれたくなかったやつに。
ムカつく。
超ムカつく。ひどくムカつく。めちゃくちゃムカつく。

「…え、そ、総悟?」

土方さんの手をぐいぐい引きながら道場に入ってきた俺を見て、近藤さんがキョトンとする。
皆は、俺たちに竹刀を渡すと、静かに道場の端によけた。
こうなった俺に手がつけられないことは、身をもって知っているのだ。
そう、身をもって。

「三本でお願いしやす」
「そ、総悟、マジでやるのか?」
「近藤さん…何なんだこれ」
「死ね土方ァァ!」

言いながら突っ込めば、とっさによけた土方さんの肩に竹刀があたる。

「…やっちゃったねー」

言うのは永倉だ。
それに続いて、山崎が感慨深げに言う。

「…懐かしいですねー、この光景」
「こうして、新人くんは沖田総悟の洗礼を受けるんだな」

最後に原田が言うと、皆でクスクスと笑うのだった。

そうして、人生何度目かの光景に、目を移した。


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