そうこうしているうちに近藤さんの道場について、まだ着替えていない二人は更衣室へ消えていった。
俺はまだ誰もいない道場にあがり、荷物を端の方に置く。

「…アチい…」

暑い。
蒸し暑い。

道場には熱気がこもっていて、立っているだけでも汗が滲んでくる。
風が入ればいくらかましになるだろうかと、雨戸や窓を全開にしている途中で、自分を呼ぶ声がした。

「沖田ー!」

その聞き覚えのある声は外からしてきて、ちょうど雨戸を開けていた俺はパッと顔をあげた。

「永倉!」

手を振りながらこちらに歩いてくるのは、幼なじみで、中学まで一緒だった永倉。
後ろに、原田、斎藤、そして山崎がいた。

懐かしいメンツに、思わず頬がゆるむ。

「おーう、みんな来てくれてありがとうなぁ!」

後ろから近藤さんの声がして、振り返って、一瞬、息がつまった。

「ほら、トシ!」
「あー、土方十四郎です、よろしく」

ああ、ちくしょう、何だってこの人は。

一々、心臓に悪い。

黒髪と、切れ長の目が袴姿によく似合っていて。

思わず、パチリ、まばたきをした。


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