「あ」
「…あ、近藤さん!こんばんは!」
「てめっ、俺は無視かコノヤロー!」

夜、といってもまだ7時だが、近藤さんの道場に向かう俺は、その途中で土方さんと近藤さんに会った。
パタパタと走って挨拶をすれば、近藤さんは笑って挨拶を返してきて。

「…なぁ、なんか俺に言うことあんじゃねーのか?」

と言うのは土方さんである。
もちろん心に引っかかることはなきにしもあらずだが(電話とか電話とか電話とか)、俺は都合良くそれを忘れていることにした。

「やだなぁちゃんと挨拶してやりまさぁ。ごくろうだな土方!」
「……」
「ハッハッハ、お前らが仲良くなってくれて、近藤さん、嬉しい!」
「……」

はぁ、と嘆息する土方さんを横目に、俺は袴の紐をギュッと結び直した。
あの後風呂に入って、また何回も着替えるのダリーなぁと思った俺は、それならばと既に着物に袴の出で立ちだ。
着替えている間に結構な時間がたってしまっていて、家を出るなり走ってここまで来た。

だからだ。
心臓がこんなに煩いのは。
決して目の前の黒髪のせいではなく。


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