俺がズボンのポケットから携帯を取り出したのを横目で確認すると、ひじかたさんは自分の携帯の画面に視線を落として、

「03の…」

ポツポツと番号を読み上げ始めた。
塗られたように黒い髪が顔に影を落として、すっと通った鼻筋が見えて、馬鹿みたいにボーッとして見ていた。

嫌味なくらいに整った顔。きっとめちゃくちゃモテるんだろうな。

そんな考えを飛ばしていたら、ふいに合う目。
びっくりして勢いよくそらして、二度目の失態に舌打ち。
こんな勢いよく目をそらしたらただの変な人だ。
しかして相手が疑問に思ったのはそこではなく。

「…聞いてたか?番号」
「へ?あ、あぁ、…せっ赤外線でお願いしまさぁ」
「いや、今さらかよ」

だったら最初から言えや何か恥ずかしいだろうが!と言いながらも差し出される携帯。
そこに自分の携帯を向け、赤外線受信を選択。
受信するのには短いようで長いような時間がかかる。その間を利用して、小さく深呼吸してみた。

落ち着け、自分
全く、どうかしている

「あー、来やしたよ」

『土方十四郎』を電話帳に登録し、パシンと携帯を閉じる。

「じゃあ分かり次第気が向き次第連絡しやすね」
「は、お前の番号は、」
「連絡したら分かるじゃないですか」
「…気が向かなくても連絡しろよ」

少々、気がすまないような顔をしていたが、ひじかたさんは渋々約束を取り付けて納得したようだ。
俺の連絡を待つひじかたさんを思い浮かべると何だか滑稽で、でも嫌じゃなかった。


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