くねくねと、団地特有の分かりにくい道を、何を話すでもなく二人で歩く。
ひじかたさんはさっきからキョロキョロと辺りを見回していて、この人バカなんじゃねぇの、と思っていたら。
「なぁ、近藤さんって剣道やるときまでには帰ってくんのか?」
「……………………多分」
「おいぃ、何だよ今の間は!」
「だって本当にわかんねぇんでさ」
ちろり、後ろを振り返って睨めば、ひじかたさんはすーっと目をそらした。
姉御にお空の星にされて、それから帰ってくるまでに要した時間は、短くて数時間、長くて数日。
だから何とも言えない。
「あー…じゃ、一応何時から始まるか教えてくんねぇか?」
「何が」
「剣道」
「いやでィ」
「…や、なんで即答!?」
近藤さんの家と道場は、元々同じ敷地にあったのだが、家を新築した時から、別々の敷地にある。
別々の、と言っても、たかが知れている距離だが。
だからひじかたさんが聞いたことはもっともなのだが。
「間違えやした。時間わかんねぇんでさ、家に帰んねぇと」
あぁそういうこと…、と妙に疲れた口調で返したひじかたさんは、それならばと携帯を取り出した。
「俺の電話番号教えとくから、分かったら連絡して」
「はぁ…いいですけど…」