近藤さんと二人、バス停にポツリ。
お互いに近況やなんやらを話しているうちに、自然、話題はきたる近藤さんの友達とやらに移る。

「ひじかた、とーしろ・・・?」
「そう。面白い奴でな、剣道もやってるんだぞ」
「へぇ、強いんですかィ?」
「我流を極めた感じだなー。総悟とは、対照的かもしれないな」
「ふーん」

ひじかた、さん。
口の中でもう一度呟いて、肩にくい込むスポーツバックを持ち直す。
手合わせしてくれるだろうか。全国連覇を果たしている俺にとって、強い人と打ち合えることは貴重なことだ。近藤さんが強いと言うなら、強いのだろう。

「我流野郎に負ける気はしやせんけどねー。うちの流派は強いですから」

いつもの憎まれ口で返せば、近藤さんは誇らしげに笑ってくれた。






昼下がりってのは不思議に音がしない。
ここが都心から離れたベッドタウンだからかもしれないけれど。
会話がふいに途絶えて、蝉の鳴き声と気だるい暑さだけが空気に漂い始めると、何だか体が浮いているような、妙な気分になる。
あー今なら立ち寝できっかもと、飛びかけた思考を現実に引き戻したのは、俺が今ここにいる理由。
バスが来た。

バス停の掲示板に立てかけていた、竹刀や木刀や練習に使うあれこれが入っている筒状の竹刀入れを取る。
近藤さんよりも気持ち斜め後ろに立つと、竹刀入れを持ち直した。

紺色の地に、水色で刺繍された『沖田総悟』が、降りてくるだろう奴に見えるように。
深い意味はないのだけれど。
何となく、そうしてみただけなのだけれど。


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