「近藤さんっ!」

青い空、白い雲、蝉の鳴き声。
『日本の夏』を絵に描いたような風景を、蜂蜜色が横切る。

「おー、総悟か!元気そうだな!」

休日、部活が終わった昼下がり、下校途中に偶然近藤さんを見かけて、ここまで走ってきた。
肩で息をしながら、その人のよさそうな笑顔に応える。

「元気ですぜ!近藤さんは里帰りですかィ?」
「ああ、明日あたり道場にも顔を出そうかと思ってな」
「マジですかィ!」

5歳離れている近藤さんとは家も近く、小さい頃からよく遊んでもらったものだ。
近藤さんの家では剣道塾もやっていて、だから剣道に関していえば、俺の恩師でもある。
今ではもっと都心の方の大学に通っていて、めったに会うことも無くなっていたのだが。

「近藤さん、誰かを待ってるんで?」
「え?ああ、大学の知り合いが来るってんでな」
「あー・・・じゃあ俺、帰りや」
「総悟も会っとくか!うん、それがいい!」
「・・・・・・」

急にバス停の前で立ち止まったから、聞いてみれば、やはり。
俺の知らない所で近藤さんの世界はどんどん広がっていて、それは多少ならず寂しくなるのだが、そんなことを感じさせない言動に、思わず頬がゆるむ。

「へい、俺も待ちやす」

そーかそーか一緒に待ってくれるか、総悟は良い子だなぁ!なんて言って、がしがしと頭を撫でてくる手が、昔とちっとも変わらないのが嬉しくて、また一つ、笑みをこぼした。


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