「土方さん」
「……」
「無視かよひじかたー」
「…何、」
「……何でもない」

お前、このやり取り何回目?という土方の呆れたような声は、天井に吸い込まれていった。
沖田に言ったはずの言葉なのだけれど、当の本人はそんなもの何処吹く風、クスクスと楽しそうに笑っている。

何でもないことなんだよ。
仕事が珍しく早めに片付いて、夕飯までの間、こうして炬燵に入っていられるだとか。
年明けの景気付けか何か知らないけれど、最近いやに討ち入りがあって忙しく、今何日ぶりかにこうして二人っきりの空間を満喫できるとか。

何でもないことなんだよ。
でもそれが、すごく嬉しいんだよ。

らしくない、らしくないと思いながら、沖田はやっぱり嬉しくて、楽しくて、寝転がって炬燵に肩まで入りながら、ゆるりと目を細めた。
炬燵ってのは四角だから辺は四つあるわけで、沖田と土方は各々別の辺に寝転がっているから、お互いにお互いが見えない。
相手の存在を確認するなら、炬燵の中にある足を駆使して蹴りつけるしかない。でも炬燵によってかく汗の気持ち悪さを知っているから、そんなバカなことはしない。

「ひじかたさん」

何でもないことなんだよ。
ただ、呼びたかっただけ。
本当に本当に、それだけなんだよ。

「ひじか…」
「何、さっきから」

だから、そんなのは反則なんだよ。
卑怯だよ、ルール違反なんだよ、分かってる?

「っ…」

しびれをきらした土方がむくりと起き上がり、炬燵の隣の辺に埋まっている沖田を覗きこんだ。
Sだからこそ打たれ弱い沖田は、その急な状況変化についていけなくて、目をまん丸にして土方を見つめた。

(無防備…)

思ったのは多分、同時。

いつもの黒い着流しが着崩れ、目だって何だか眠そうな、そう、まるで寝起きな土方を目の前に、沖田はカァッと顔を赤くした。
何だかいけないものを見た気分だ。土方は副長をやってるだけあって中々用心深いから誰かにこんな姿を見せたりはしないだろうし、それにこのアングルはいけない。最近ご無沙汰な、でも数えきれないほどしてきた、同じ布団で朝を迎えた時のような。

沖田は誰かになつくようなキャラではないし、後にも先にもこんな表情を見せるのは自分にだけだろう、思って、土方は珍しくふわりと笑った。
そっと沖田の頬に手を添えると、何、ともう一度問う。

「なっ、何でもないってさっきから…っ」

言いかけた沖田だが、不意に土方と目があった瞬間、ぶわっと視界がぼやけて。頭がクラッと熱をもてあまして。
あ、あ、と思ううちに、口が勝手に言葉を選んでしまった。


「…………すき……」






ラブ アンド ピース!



(慌てて前言撤回しようとした沖田、その前に想い人の唇がふってきた)


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