自分勝手だと思った


伝えた所でどうにもならない事を
知っているのに

寡黙な忍は予想通り何も答えず、目深に被った兜で表情は見えない。腕を組んで、じっと立ち止まったまま。


でも


どんなふうに思われても今伝えておかなければ一生後悔すると思ったし、縁談相手を確認するのを頼んだ事も小太郎が大丈夫だと言ってくれたら諦めがつくと思いたかったから。

「…ごめんなさい」

土の付いた足を軽く叩き、足早に去っていく名無しの後ろ姿を見送りながら小太郎は考えていた。


これからどう名無しと接すれば良いのか、と。


己がどう想われているかなんて考えた事も無かったし突然の告白に多少の戸惑いもあって、暫しその場に佇んでいた。


「………………」


想われて嫌な訳では無い

しかしだからといって名無しの気持ちに応えられるか、と言われればそれは無理な話…如何せん身分が違い過ぎる。


純真無垢な名無しの心を
悪戯に弄ぶ様な真似は出来ない


清らかで美しく


それはまるで




触れてはいけない宝石




穢れた身の己には
その姿を瞳に映す事すら
眩し過ぎて



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