バレンタイン大作戦!

「なぁ小太郎〜、もうすぐバレンタインだけど彼女とデートでもするの?」



バイト中、作業しながら隣にいる佐助が聞いてくる。


「うん、多分。まぁそんな感じで考えてる。」



「小太郎、もうバレンタインまで時間あんまりないよ?チョコレートもらうだけじゃなくて、こっちも特別な日にしてあげないと!本当にそういうの疎いんだから〜!!」



「……………」



佐助は僕と彼女の話をよく聞きたがり、また話をするといつもダメ出しとアドバイスをされる。まあ、あんまり恋愛に興味とかなかったもんでデートとかどうしたらいいかわからなかった僕にはありがたかった。



「とりあえず、どっか連れていってあげなきゃダメだよ!いい雰囲気のお店とか…もう心配で仕方ないよ、全く。」



「………ぷっ。」



「!?ちょ、小太郎何笑ってんのさ?」



「いや、本当にいい友達持ったな、って思って。」



「はぁ〜…感謝されるのは嬉しいけど!な〜んか、小太郎のことほっておけなくてさ。ほら、小太郎口下手だし。イケメンなのにさー。せっかく可愛くて性格もいい彼女ができた訳だし!上手くいってほしい訳よ!」



まるで友達というよりはオカンだ。そう思ってまた小太郎は笑った。
佐助、ありがとな。
僕、頑張るよ。




****




小太郎の彼女、鶴姫はその時悩んでいた。



「チョコレート…どんなのにしましょう…」



小太郎は鶴姫より少し年上。どんなチョコレートをあげようか悩んでいるのである。



雑誌をめくり、バレンタイン特集を開く。色々なチョコのレシピが並ぶ。トリュフ、ガナッシュ、デコチョコ、ガトーショコラ、ブラウニー…本当にたくさんあって鶴姫を悩ませる。




物静かで大人っぽい小太郎はなんとなくビターな方が好きなのか、本人に聞けばいいのかもしれないがなんとなく小太郎を驚かせたいため聞き出せない。




「あと少ししかないのに…本当にどうしましょう!」


とりあえず雑誌に載っていたチョコを一通り作ってみた。と、いっても鶴姫は不器用なため形などはぐちゃぐちゃだったのだが…。



「……こんなのじゃ風魔さんに嫌われてしまいます!!特訓しないと!」



と、言う訳で小太郎、鶴姫2人のバレンタインに向けての密かな計画が始まったのである。




***


「いいか小太郎、チョコ貰ったらキスだぞ、キス!しかも自然に!ムード作って!」


バイト帰りにカフェで佐助とバレンタインデートの作戦会議。



14日は夜景の見えるレストランでディナー。(佐助オススメの店があるらしい)それからドライブデート。という流れに決めた。



「かっこいい所見せろよ!!小太郎!!」



背中をばしんっと叩かれ気合いを注入される。



「ありがとう…(大丈夫かな…)」



家に帰り、レストランに予約しようと思って電話をかける。



…が。



「はぁ、全滅だ。」



バレンタイン3日前とあって、どこもかしこも予約でいっぱい。やむなく素敵な夜景が見えるレストランは断念した。



…カップルってみんな考えること一緒なんだな。


せっかくデートプランを考えて貰ったものの、店の予約がとれない。この調子では夜景が見えるスポットもきっと人でいっぱいだろうと感じた小太郎は、佐助には悪いが小太郎宅でお家デートを計画することにした。



部屋、片付けなきゃな。



一人暮らしのワンルーム。彼女を初めて家に呼ぶのだから嫌われないようにしないと!!掃除にとりかかりはじめた。




***



一方鶴姫はチョコ作りに悪戦苦闘していた。何回やっても形がぐちゃぐちゃだったり、ケーキを焼けば焦げたりなど…



「めげませんよ!!小太郎さんのために!!」



毎晩、キッチンに立ってチョコレートと格闘中である。



***



バレンタイン当日。


小太郎宅最寄りの駅で待ち合わせし、小太郎宅へ向かう。



「ごめんね、お家デートで…」


「いえいえ!小太郎さんのおうちに行けるなんて感激です☆」



鶴姫が本当に嬉しそうで小太郎は安心した。今日も鶴姫は可愛い。直視できず、手だけ繋いで歩いて行く。恥ずかしくてたまらなかった。



マンションに着いて、部屋に案内する。



「うわぁ〜!!小太郎さんのおうち素敵です♪」


綺麗にしておいてよかった…小太郎は心から思った。鶴姫は部屋のインテリアなどをぐるぐる楽しそうに眺めていた。



ピザを頼み、一緒に食べる。たわいのない会話をしたり、一緒にテレビを見たりして幸せな時間を過ごす。


「小太郎さん、これどうぞ☆」


鶴姫から差し出された、ピンクの小さな箱。ラッピングを開けると、ちょっと形が崩れたトリュフが3つ並んでいた。



「すいません…練習したんですけど…形が…」



小太郎はひとつつまんで食べてみる。甘い味が口の中に広がる。きっと、一生懸命練習して作ってくれたんだろうな。



「ありがとう。すごくおいしい。」



「ほんとですか!」


鶴姫が笑顔になった。こんなとき、気の利いたことを全然言えない口下手な自分に小太郎は腹が立った。



『チョコを貰ったらキス』
佐助の言葉を思い出した。


小太郎の顔が赤くなる。



鶴姫の頬に触れ、顔を近づける。鶴姫の顔も赤くなる。



そのまま、口付けた。



一秒くらいの触れるようなキス。



2人は急に恥ずかしくなって、少しの間お互い黙ってテレビを見ていた。


先に口を開いたのは鶴姫だった。
「小太郎さん、これからもよろしくです☆」



「こちらこそ…」


言葉の代わりに、小太郎は鶴姫の手をぎゅっと握った。



2人の間に幸せな時間が流れた*



次の日、バイトで佐助に報告し、思いっきり冷やかされた。そして昨日の幸せな時間を思い出して小太郎はまた恥ずかしくなった。







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