大学生パロ





物事の善悪を理解して、道徳に反さず倫理には反して犯したくなるのは人間味があるのではないか。

長い脚を組換えて煙草の持つ手が膝元から口元に流れていく過程を流し目に見ていた。焦点の基準を変えると、直ぐに目に付く切れ長の目元はなんの変哲もない校舎の白い壁に真っ直ぐ向かれている。

「ナニ?」
「斗南さんの目元が気になって」

伸ばした指先が頬に触れる事はなかった。その代わり、遠慮の欠片もない鋭い目付きが向けられる。

「目付き悪いなぁ〜って」
「おかげサマで」

そう言うと彼女の目線はまた戻されて、さき程と違うのは少しだけ目元の皺が増えた事。視線を外されてしまったことに残念と思いながらクスリと笑う。気付くか気付かぬか、わからない程度にわざとらしく。

皺が増えた。気付かれてしまったから大成功。


煙草を吸っている時に邪魔されるのが嫌いな彼女を邪魔することに意味があるとすれば、その綺麗な顔が私の所為で歪む所を見ていたいから。「ジャマすンな」と咎めの言葉があっても、「ジャマだ」と言われた事はまだない。喫煙者でもない私がここにいる事を彼女は何も言わない。まして、校舎内に設置された喫煙所が幾つもあるというのに、この喫煙所を何時でも愛用している。

近いから。移動するのも面倒いから。どうでもいいから。何に対して?

幾つもある理由を抜粋してみて、核心を持てる理由はなくて。彼女は別段何も言わないから。


「煙草って美味しいの?」
「吸ッてみる?」
「いや、いい」

だから、私も何も言わない。



短くなった煙草を捨て去る。あ、今日は今か。と思った理由は簡単で、彼女が流し目に私を見たから。


「帰るわ」
「まだ一限終わったらばかりだけど」
「アー、ソーだっけ?」
「先週は二限終わりにそんなこと言ってたわよ」
「アー、ソーだっけ?」
「それも言ってた」

次の言葉は予想できた。安易で簡易で、聞き飽きた言葉は毎週綴られる。

「煙草が切れたもンで」
「買えば?」


週一回のこの日。空き時間に現れる彼女と軌跡が交差する瞬間は、私にとってどうでもいい程つまらないけれど。


「もっと強烈ナノが欲しいンだよ」

「発火剤も必要?」




「そンなもン、いらねーよ」



燃やされていくのは私だと気付くのは何時だろうか。




自然とこの後に与えられる稚拙な行為は痛みをくれるから、その最中に彼女の顔は歪んでくれるから、重要性も皆無なつまらない出来事にさえ意味はあると思った。





何も言わないんではない、何も言えないのだ。
















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