「これウマイ」
「どれどれ、ちょーだい」
「ン」
「あ、本当だ美味しい」
「ソレ、くれ」
「どれ?クリーム?」
「アイスものせて」
「はーい、あーーん」
「ン」


手とスプーンがいったりきたり。此処、学食だけど。いいのあれ?いいと思います。はい。

「あたしもやりたい!あねご、と、おねーたま。本当うらやまっ!ってか激甘!!やりたい、やりたい、やりたい、ヤりたい!」
「順、うるさい」

自然に凝視して、ゆだれがちょこっと口から出てたらしい。夕歩は、きたない、うるさい、と連呼して見向きもしなくて、なぜ空間は同じなのにピンクらしい雰囲気は全く出ないなんて

「ひいきだ」
「ねぇ、黙って食べれないの?」

煩いわたしに見兼ねて、前にあったお皿を掻っ攫いにかかる夕歩に軽く謝罪。平謝りに近い、頭上で合わせた掌を解いて大好物のお肉さんを返してもらい、涙を流しながら口に放り込んで噛み締めた。

「う〜、う〜、う〜」
「…」

カチカチと規則正しいナイフとフォークがお皿に当たり、隣は黙々と口に運んでいる。それを恨めしく思い、ぐうっと羨望を制御した。


「斗南さん、口…」
「え?ナニ?」
「付いてるわよ」

その頑張りを尽くこの二人は摘んだ。

おねーたまは指先であねごの口の付いた生クリームを取って自分の口に運ぶ。かも当然のようなその行動に、あねごに全く変化はない。

照れる所ぢゃないの?

平然と、わりぃ、とその指先の起動を見て、何事もなかったかのように自分の取り分を食べていた。

「見過ぎ」
「だって、あれっ。見たっ?ね?夕歩!夫婦って感じっ!うらやましいよ〜」

斜め前に座る二人は自然と目が行く。視界に入る範囲だけど、焦点がそっちに向いてしまう。意識してしまえば食い入るように見てしまうのは、多分女の性だ。っというより、あたしだけ?そう思い直して周りを見れば、一人の人物に目がいった。ゆかりと食事をしている綾那が口を開けたままポカーンと二人を見ている姿だ。あいつもか。そうだよね。気になるよね。好きな子とあぁ、したいって思うよね。でも公共の場であんな姿って案外恥ずかしいのも本当で、結局万が一あんな状況になったらあたしは俯いてしまうかもしれない。

「順って、あぁいうの好きなんだー」
「好きだよっ!イチャイチャしたいって思うし、なんか幸せぢゃん!!しかも、あの余裕。日常茶飯事ですよ、私達って感じの大人な余裕って素敵」
「ぢゃぁ、順はやめた方がいいかもね」
「え?なんで?」

夢中になっていたわたしの目は夕歩の言葉に簡単に航路を変えた。隣を見れば何やら含み笑いをしている夕歩が、フォークでくるくるとスパゲティを丁寧に巻いている。そうして、綺麗に巻かれたソレをーーーはいって、わたしの目の前に出してくるから、身体が固まってしまった。え?と数秒後出た言葉に夕歩は「はい、あーん」と小さな口が告げる。事の意味が分かってしまい、酷く背筋は緊張してしまっていた。

「ゆ、ゆうほさん?」
「好きなんでしょ?こーいうの」
「そそそそ、そーなんで、すけど、、ね」
「だから、はい」

目の前に迫るフォーク。含み笑いは濃くなる一方。顔だって近い。どーする、どーする、と思っていると遠くで綾那の慌てる声が聞こえた。あぁ、お前もか。なぜだろう、好きすぎるシチュエーションを好きな人がしてくれている。そして、こんな事滅多にしてくれない相手が今こうして目の前に迫ってきている。こんなあり得ない状況下はわたしの心臓を破壊しかねない。


それでも勿体なくて、意を決して勢いよく口にいれた。するっと金属が抜かれ、口内にはタラコのぷつぷつ感と細長い麺が残る。一生懸命、平静を装い噛むけれど全く味がしない。困った。どーして?美味しいはずなのに、無味。





だって間接チューだよ?姫の間接チュー。しかも、あーん、だって。公共の場でもあるし、二人きりでも恥ずかしいのに、こんな…


「だから言ったのに」

そうして夕歩は今し方あたしの口内に入っていたフォークをちろっと赤い舌で舐めた。それにまたカーーっと脳は沸騰し、ジュクジュク熱い。サイレン音を惜しげも無く鳴らしている鼓動は何時になったら止むのだろう。冷水でもぶっ掛けたい気分だった。それか、穴を掘って埋まりたい。寧ろ、埋めてください。


「そういうとこ、順可愛いよね」
「…バカ、」

言わなきゃ良かった、言って良かった、そんな狭間で揺れて、スパゲティだったものが喉を通って行く。羞恥をはぐらかすように綾那を見れば机に顔面を押し付けていた。あ、お前もか。やり通したんだね。そうして、互いの勇姿を目にした、あたしは元凶、発端の先をつい見た。



「若いねぇ〜」
「あらあら、無道さんも久我さんも真っ赤」


こんな歴然とした差を見せつけられたあたしはまだ青い。















「綾那。。ねぇ、あーやな」
「…なんですか?」
「もう一回する?」
「楽しんでるでしょ?」
「そりゃぁ、あなたのそんな顔ベッド以外ぢゃあまり見ないから」
「ちょ、なななにっ言ってんの!!」
「あ、想像した?変態ゆでダコ」
「ばかばかばかっ」


きっと、嫁には勝てない。そんな法則。






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