出会って一週間と二日…面識自体はあったがちゃんと接点を持ったのが一週間と二日前という意味だ。そんな短い時間で付き合ってしまったわたしたちも今日やっと期末試験当日という当初の目的の日になったのだ。わたしが先生から挑まれた内容は斗南さんの赤点を全てなくすということだった。最初はまんまと乗せられた感があったわけですが今となっては結果オーライになってしまったわけで、少しは先生に感謝の意を込めてみようと思っってみたりもした。今朝職員室で会った先生の一言を聞くまでは…

ーーーーどうかしら?祈さん。うまくいったのかしら?

ん?なにいってるのこの先生。
その一言に心拍数が急激に早まる。出ていなければいいなと思うけれどこの先生の前では”隠してることさえバレてしまう”。ここで言っていることは斗南さんの勉強面の話でないことはわかっていた。なんたってこんな先生の面白そうな顔からして断然そんな内容なわけはないのだ。それでもわたしは足掻こうと長年培った笑顔で言った。

「斗南さんの勉強面なら問題なく。もとからやれば出来る人だったので苦労はしませんでしたよ」
「あら、そう。こちらは中々手強かったけれどわたしの手にかかれば余裕よりも余裕だったわ。ーーーーま、そちらの苦労はまた別だと思いますけど」

フッと先生は笑う。余裕よりも余裕の意味が全くわからなかったし、そこにツッコミたかったけどもそれさえもできないほどにこちらは余裕などなかった。というかなぜこの人ーーー天地先生はわかったように全て見透かしているのか。

「噂では仲睦まじいとお聞きしてます。本当に結果オーライとはこのこと」
「なんの噂か知りませんが先生のおっしゃってることがわたしにはわかりません」
「そう睨んでは可愛らしい顔が台無しよ?祈さん」

朝からこんなやりとりしたくないんだけどなぁーっと困り果てる。この人との会話は無駄に神経が削れるのだ。これから斗南さんの最終確認にわたしも例外なくテストを受けるのに、こんなところで無駄なエネルギーを使っている暇はないのだ。ーーーーと、まぁ、隠す意味もないんだけどね
ふぅっと諦めたように眉毛の端を下げた。

「聞きたいことはたくさんありますけど、なぜ先生がわたしたちがそーいう関係になったことをかも当然に言っているのかこちらとしては不愉快でしかたないのですが」
「あら、あなたたち付き合ったの。」

しれっとそんなことを言った先生にわたしの時は止まる。ーーーーん?なに言ってるのこの先生?そしてデジャブ?
首を傾げてキョトンとしている先生を見るにわたしはとてつもないことを自分の口から言ってしまったのだと気づいた。(やらかした…墓穴を掘った…)一気にサーっと顔の熱が去る。先生から見たらわたしは今とても青い顔をしているのではないだろうか。
暫く固まっていたのかもしれない。先生が動いた。

「もう少し戯れていたいけども、本日は楽しみにしていたテストですし、、らこんなところで油を売っていていいのかしら?」

ーーーー誰のせいよ。

喉まで出て潰す。代わりに一つ溜息が零れた。いいや。疲れた。とりあえずもー、時間だ。よく考えれば5日前に付き合って知っているとすれば本人のわたしと斗南さんと玲だけなのだ。では、なぜ?あのような言い方をと考えてやめた。なぜって簡単すぎるではないか。

この先生が言葉が大袈裟すぎるのは今に始まったことではないということだ。








長い廊下を最高のスピードで歩く。いつもはこの少しばかり早い時間に生徒は殆どいない。しかし、今日という日は別格なのだと段々と増えていく生徒を素早く抜かしそう思った。もう少しで自分の教室が見える。角を曲がり自分のクラスのナンバープレートが見えたと思ったら丁度ドアを開けている斗南さんと、隣には玲。
(なんであんたが一緒に登校してんのよーーっっ!!)
ただの八つ当たりにすぎないのはわかっているけどどこかで発散しないと名前を書く段階で答案用紙を破り捨ててしまう。(そんなことしたら周りの反応はとても楽しいことになりそうだけど…)

そうやって働く頭はとてもいらない動力だなと思っていればあちらが気付いたようだ。
あっ、と声が聞こえて。とったら南さんが手を上げる。

「オーイ。祈。ゆーとうせーが廊下走るとこけンぞ」
「あら、斗南さん。おはよ。私は走ってません。競歩です。そしてコケるなんてそんなあるまじき行為、玲にお似合いよ」
「おい、そこでなぜあたしの名前が出るんだコラッ…」
「ちょっと、玲。廊下で騒ぐなって先生に言われたでしょ?」
「だれのせーだーっ!!」
「。。とりあえず、なンでぴりぴりモード?」
「そんなことより斗南さん。とてもいいところに。時間がないの。誰かさんのせーで。一時間目の国語の暗記、漢字、読解、大丈夫に決まってるわよね?」
「…ハイ。ダイジョーブです…」


そんなこととわなんだーっと鞄を振り回す玲はとてもとても通行人に迷惑をかけています。ま、それよりも。

「斗南さん、」
「ハイッ!!」
「頑張ろうね?」

鞄を後ろで両手で掴んで首を傾げる。引きつく頬は気のせいとしよー。固まる斗南さんの手を掴み中途半端に開けられたドアを置くまで押す。準備万端。たまにはあの先生をギャフンと言わせたい。

「神門…」
「がんばれ」

首だけを後ろに斗南さんは玲に引きつる顔を向けた。あ、そーだ。

「玲、あなたも赤点とったらわかってるわよね?」
「へ?」

ニコッと笑ってみせたら、あらお揃い。斗南さんと玲、同じ顔をしていた。なんかおもしろい。

「がんばれ」

隣から小さな声が聞こえたのとうわーっ、どーしよっと叫ぶ声が被る。
わたしは小さく小さくクスッと笑った。
二人とも赤点を回避できたらパーティーをしてやろうと思う。







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