※大学生設定






ーーー乾杯
透明なまだら模様のロックグラスを差し出した。すると軽い衝撃にまん丸い氷がカランと鳴る。
「呑める?」
「ん、大丈夫」
無理して飲まなくてもいいと、先ほど酒屋での買い物で言ったにも関わらず澪は普段飲んでいたお酒を買わずにまたわたしのお酒を飲むようだった。ちょび、ちょび、と舌で確かめるように嗜むお酒に澪は若干眉をひそめる。やっぱりまだ慣れないようで、三ヶ月前から好まないわたしのお酒を飲んでいた。なぜ?と毎回聞いても「最初は飲んでみたかったっていう好奇心だったけど、結構癖になるんだ。律のお酒」との返答。しかし、はたから見たらやっぱり好きで飲んでいるには程遠い顔をしている。それを見ながら頭の片隅で大丈夫かなぁ、明日月曜日で一限からだけど、とそんなことを思って失敗した。明日は月曜日だ。休日が終わってしまう。わたしは月曜日がとても嫌いで、その理由も子供じみた理由なのだけれどそれがわたしの最優先順位の中の上位にあるのだからしかたないと思う。
「澪、呑みすぎるなよ」
うん、と小さく顎を引いた。そうしていても澪の手はロックグラスを離さない。もう三杯目だ。
「りつ…」
甘ったるい声が部屋に響いた。ヤバイヤバイ、と訴えたのはわたしの中の天使。アルコールによって頬は赤らみ、美味しそうなぷっくりした唇は情緒的だった。あれ、おかしいぞ。なんでこんなピンクの雰囲気醸し出しちゃってんの澪しゃん。。
困るとまってましたを両方に受けてよくわからなくなったわたしは固まるしかなかった。
「ねぇ、なんでわたしが無理しても律が飲むお酒飲みたいって言ったと思う?」
「…のんでみたかった、から?」
「一点…」
ありゃ、赤点真っ逆さま…っていうか澪の答えをそのまま言ったんだけど。
顔を近付ける澪にわたしは仰け反る。今日は変なスイッチが入ってしまったようだ。なにが悪かったのか、珍しくわたしがくっつき虫になっていないから?それとも忙しくて構ってあげれてなかったから?会うのも久しぶりだから?
わたしは徐々に近付く官能的な澪に理性を削がれないように「なんで?」とはぐらかした。赤い果実のような唇が半開きの状態から形どり始めて、わたしは息をのむ。
「律に飲まれるお酒に嫉妬した」
ーーー律は毎日、平日も休日も絶対一杯は飲んでるそのお酒がたまらなくなったんだ。それにわたしも律が好むものを少しでも共有したい。
わたしは月曜日が嫌いだ。夢のような時間が過ぎてしまうからだ。好きな人といる時間が終わってしまうからだ。一週間待てばまた会えるけれど、それももどかしくてそれを奪う月曜日が嫌いだった。学校行ってサークルをしてバイトもして、そんな生きていくための行為がはじまる月曜日。
「わたしの代わりにそれを使わないで、使うなら…」
そう言いかけた言葉はわたしの唇の奥深くお酒とともに流し込まれて行く。飲み慣れたそれなのにどこか知らない味がして頭がくらり。
こんなやつに溺れるのは嫌だけど、澪なら溺れたりないとさえ思う。










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