重たい言葉を冗談に混じらせれば重くないと思い始めてからというものちょっぴり痛い後悔が後味に残る。軽々しく二文字を口にすれば、はいはい、となんなくはぐらかされていた。寧ろ、はぐらかすまでもいっていないかもしれない。冗談には冗談を返してしまえば手っ取り早く、空気も濁りはしない。そうして大人は本音を隠していくのかな、とりんはまた後悔が募っていく。

「好きだよ」
「わかったわよっ!何回も何回も…毎日言ってて飽きないの?」
「ん?飽きないよ?好きなんだもん」
「はいはい」

後ろから首元に腕を回した。ギュッと力を籠めれば苦しいと非難の声が上がる。これまでの流れは昨日も、一昨日も、その前も、ずっと、ずっと、、、あれ?いつからだろう。苦しくなって、言いたいと思い始めて、どうしようもなくなってから一人で抱える事に耐え切れなくなった辺りから、どれぐらいのやり取りをしているのか。助かったと言うべきか、私の発言は軽い音が多い。冗談やおふざけに事実も本音も乗せれるぐらいの声を持っていたから、空気を震わす度に心臓は悲鳴を上げるけど、逃げる方法が見つかったから。


「好きー、髪いい匂いだにゃー」
「…ちょっとっ、嗅がないでよ」
「んー?こりゃ、グリグリ」
「あーーっ!ばかっ!」

好きだよ。好き。あー、やばいぐらい。好き。触れていたいし、声に出していたい。まきちゃんの事ばかり考えて、いつも立ち止まる。ちょっとした優しさで舞い上がって、ちょっとした事で凹んで、じゃれつくように触れて、、、好きと言う。

「まきちゃーん。今日アイスたべいこー」
「こんな寒いのになんでアイスなのよっ!」
「食べたくなったにゃー」
「嫌よっ!」
「えええーーー」

ごろごろ。首筋に顔を押し付ける。やめて、やめてと慌てるまきちゃんは難なくアイスを食べる事に了承した。


「そのかわり、部屋にしてよ」
「ぢゃぁ、りん家来ればいいにゃー」
「はいはい、なら部活終わるまで我慢してなさい」

甘やかさないで。自惚れるから。甘やかして。嬉しいから。好きって言い返してくれたらどんな気分なんだろう。幸せすぎて死んじゃうかも。


「好き、好き好き」
「もー!!今日しつこい」
「だって好きなんだもん」

ドアが開く音でタイムリミット。パラパラと先輩達が文句や挨拶と共に部屋に入ってきた。それに返しながら腕を解く。まきちゃんは平然と机でメロディーを思案していた。痛いから逸らしたというのに、なんでこんなに痛いんだろ。今日も伝わらなかった。きっと、ずっと伝わらないんだろうと思う。後悔だけが今日も募って笑うんだ。








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