春が来る。始まる季節が終了を鳴らす合図になると思うとーーーーカナシキカナ。


鐘が一つ…広大で巨大なこの箱に響いた。
この身体を震わすような芯まで届く音を聞くのは何年目か。何百回、何千回、そんな値にまで上るこの鐘の音がいつの間にか変わってしまったのは何年目だろうか。
(いつだって変わらない。変わったのはわたしたちだ…)
縛ったのはどちら?縛られたのはどちら?勝手にそう思ってただけなんだと思い知らされたのはついこの前。呆気なく過ぎたあの日の時間が持ってきたのはあの時の自分。こんなにも楽しい。こんなにも熱い。当初の目的ってなんだっけ?なんのために剣を振ってたんだっけ?わかるか紗枝?

「ん。もー思い出せない」
「呆気ねーなぁー、本当。」
「そんなもんだったんだよ」

あー、そうだな。今考えたらそんなもんだ。もっと理由があったんだ。剣を振るう理由が。なぜ思い出せなかったのだろうか、今はもうどうでも良いような理由であいつらの未来も楽しみも、まして自分たちのマヂを無くす寸前だった。ちょっとばかしはやとちってしまって現実が迫ってると思えばいつまでも夢を追う自分ではいられなかった。ということだ。

「馬鹿」
「そーね、馬鹿ねー」

縛ったのはどちら?縛られたのはどちら?縛ったのは互い。縛られたのは互い。空の枷が足を止めていた。でもさでもさ…

「あってよかったな」
「あったからこその今っていうこと?玲は相変わらず乙女ね」
「う、うるせーな。今この会話でおちゃらけんな」
「またブスッとして」
「誰がブスだっ!」

言ってないから、と呆れて笑う。
ーーーーでも、玲…楽しそう。
頬へ手が滑り、目が合う。なんか照れ臭くて、こんなにも今満たされて、ーーーそうかよっとわたしも笑う。

「あー、もう手に入っちゃったなぁ」
「んあ?なにがだよ」
「いい景色…」

あったんだよ。欲しいモノ。手を伸ばせばすぐそこに。遠回りしすぎたのかもな。わたしたちは。

ベッドに置いていた手に手が重なる。ふと隣に重みが加わりベッドが軋む。隣には紗枝。目指すは頂上。共に競うはライバル。なんて単純。背にかかる重みはなくなった。あとは真っ直ぐ真っ直ぐーーーーー、

「わたしは玲が隣にいてくれればなんでもいいのよ、」

どうしようもなく大切な奴と一緒に上に駆け上がるだけだ。




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