「なんでお前そんな疲れてんだ…」

やっとのことでお昼。玲はししゃもを鷲掴み、頬杖を付いてバリバリ頬張っていた。お行儀悪いわね。ちょこっと制裁。わたしは思い切り足を踏んづけた。

「あぎゃっ!!い、いてぇーっ!何すんだよ!」
「もっと女の子らしくなさい。お父さん」
「誰がお父さんだっ!!」

食堂は何時も通り正常運転で騒がしい。これが正常運転なのも最初は驚いたが今では慣れてしまった。だから昼食の時間帯は玲と、っていうのも慣れ親しんだ恒例だと思う。でも今わたしの目の前に並んでる物は食堂メニューではなくてスペシャルコース。黒鉄さんのお父さん?が多分、黒鉄さんから聞いたのか別メニューでお祝いをしてくれた。

「オイ、それ一口」
「しかたないわね、はい。あーーん」
「やめろっ!自分で食べれるわっ!!」

横から伸びた手がわたしのテリトリー内に伸びてきたからもう一度足を踏むつければピンポイントで同じ場所だったらしい。悶絶する玲を他所に優雅に食事を楽しむ事にした。
ーーそれより、、

「本当に美味しいわね」
「だ、だから…一口…」
「玲もスペシャルメニューでしょ?自分のだけぢゃこと足りないわけ?欲張りさんね」
「あたしのはちげーだろぉおー!なんで怪我治ってんのに週二で魚メニューなんだよっ!肉食わせろ」
「あら、がめつい。食わせろなんて破廉恥」
「…なんの話してんだよ」

はぁー、と溜息を吐いて大人しく骨を噛み締める玲にしょうがなしに綺麗に切った肉をフォークに刺して持って行く。なんだよ、だなんて顔を顰めるもんだからそれをちらつかせた。

「わたしが食べさせたあげる。ぢゃないとあげない」
「そんなことできるかぁーっ!!なら、いらねー」
「強情ね!ゆだれ垂れてるわよ」
「んあっ!!」
「うそー。はは、ーーでもまぁ、今日わたしの誕生日だしそんのぐらいのお願い聞いてくれてもいいんぢゃないかしら?」
「なんでそーなるっ!!」
「刃友で幼馴染で、あんなことやらこんなことした仲なのに今頃のこのこ顔出しにきたのは何処の誰だっけなぁ〜」
「くっ、意地悪いぞ…お前〜〜〜っ。しかも誤解を招くような事言うな!」

声に反応する周りの生徒は、ーーあらっ。やら、ーーそういう関係。とか言いながら顔を赤らめていた。それも面白くて、玲を虐めるのはもっと面白くて楽しい。やっぱり年を重ねてもこういうのは変わらないで欲しいんだと改めて思った。

わたしもわたしで、今日はひきませんよ。

「はやく」
「っ」
「あーん」
「い、いっかいきりだぞっ!」

渋々、羞恥心に顔を赤らめても律儀な玲は今日という日はとことん甘やかしてくれることをわたしは知っている。だから、ほら。わたしのために頑張ってくれる玲は一生懸命、雑念を振り払おうとして、一口パクッとわたしが持つフォークの先端を食べた。すぐ離れてしまったのはなんだか寂しかったけど、それ以上の暖かさを感じて嬉しい。

「どぉ?美味しい?」
「ん、悪くない…」

素直に美味しいって言えないところもなんだか可愛い。隠そうとしてもバレバレ。玲も嬉しそうなのが滲み出ていた。


ちょっと、トイレと玲は席を外したのは、食器に乗っているものが無くなり、後二十分もすればお昼時間の終了の鐘がなる時間帯だった。お腹一杯で満足したわたしは玲が帰ってくるまでのんびり待つ事にしたけど、中々帰って来ない。何してるんだろうか。女の子の日?なんて思っていたら玲が登場。ーー遅いわよって笑って小言を言いながら振り返ればぶっきら棒に照れている玲の手に小さなワンホールのケーキがあった。

「誕生日、おめでと」

ーーさすがに歳分の蝋燭は多いから長い蝋燭四本な。そう言った玲は火の付いたケーキをテーブルに置いた。少し呆気にとられてたようで、反応が遅れる。驚きも混ざってて小さなサプライズ。ーーどーしよ。本当に嬉しい。玲いつからこんな事できるよーになったの?ちょっと失礼な事を思ってそれを写メで撮って保存。

「玲、ありがと。凄い嬉しい」
「おう。明るくてわりぃな…。」
「うーうん。本当にありがと」

一息で蝋燭の火を消して、揺れる煙に歯痒さを残して、

ーーあぁ、太るな

なんて思っても玲が用意してくれたケーキほぼ全部食べちゃった。







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