今日はこれにしようと、お気に入りの髪ゴムを手に取って慣れてしまった三つ編みとポニーテール。目の前の鏡で順調に結いで本日も気合い充分、とにんまり笑った顔が映し出されている。そこで気付いた赤い印は耳のすぐ下辺り。誇らしいような、歯痒いような、でもちょっと困る。こんな分かりやすい場所に付けて皆に見えてしまうぢゃない。

どうしたものか、と思案中に携帯が鳴った。表示されている名前に嬉しくなってワンコールで耳元に持っていけば、お姉と可愛らしい声が聞こえてきた。

「紗希?おはよう。朝早いわね」
「おはよう。玲みたいに寝坊しないから」

不服そうな声は小さい頃から慣れ親しんだ声で、ちゃんとご飯食べてる?だとか、睡眠取らなきゃダメだよ、とか。玲わ甘やかしたらわたしが叱りに行くから、だとか。そんな小言にも似た言葉だらけで、思わず小さく笑ってしまった。お母さんみたい、って思ったけどそれを言うと怒るから、相槌と心配性な妹を安心させる言葉を選んでいく。

「あ、お姉の恋人はどお?泣かされたら打ちのめしに行くからちゃんと行ってね」
「大丈夫よ。案外あんな形相と言葉遣いだけど優しいから」
「お姉を傷物にしたら承知しない」
「なら、もうボコボコね」

ーーなにー!!もう手出したの?あり得ない!!次会ったら言ってやる。とかなんとか、そりゃもう本気の本気。そんな会話も落ち着いて、今度はわたしから。


「紗希もちゃんとご飯食べて睡眠とるのよ」
「うん」
「体調には気おつけてね」
「うん」
「たまに帰るから、いい子にね。って紗希は危なっかしいけど、おいたはしないもんね」
「お姉と違うから」
「あはは、言い訳もできません」
「お姉」

「ん?」と聞き返した後、少しの間。電話越しで聞こえたのは照れたような唸り声。
それが可笑しくてーーどうしたのよ、と笑ってしまったらあっちもつられて笑って姉妹愛なんちゃって。


「誕生日おめでと」

優しい声にーーありがと、と小さく返したた。じんわり嬉しさが込み上げてもう一度ありがと。
もう荷物送ってあるからって言われて、本当に律儀でしっかり者だと誇らし気に思ったり。わざわざ、こんな朝早くから妹による愛の篭った言葉を頂く姉はそういないんぢゃないかって自惚れて照れ笑い。






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