「おい、メガネ」
「メガネ呼ばわりされる筋合いはないんですけど」

第三者からしたらまずこの二人が一緒にいることは珍しいと思うのだろう。隣に座る柊さんを一瞥、表情は至ってつまらなさそうだ。そうして目の前をまた向き直せば長い足を組換えたようで衣類の擦れた音が聞こえた。

「で、どれがタイプよ?」
「んー、今のところいないですけどー…お尻だけでいうならあの子ですかね」
「あー、なるほどね。いいハリしてンねー。胸は?」
「あの子です」
「ナニ?お前巨乳好きか?」
「巨乳好きっていうわけでもないですけど、あの子の胸、形が良いし体型にもあってるとと思うんですよねー。流石に巨乳すぎても気持ち悪いぢゃないですか?って、そういう柊さんは?」
「あ?あたし?柔らかさと感度が備わっていればオーライ。」
「変態か」
「お前もな」

グランドには体育の授業に励む生徒達の群れ。選ぶように見定めて、ジロジロと観察。わたしと柊さんはなぜか約束もしていないというのに、一日一回はこんなことをしてダラダラと過ごしている。

「お、アノ子可愛いンぢゃね?」
「どれです?」
「あれだよ、あれ。眼鏡かけてっけど結構綺麗な顔してンぢゃないの」
「なんか柊さんのタイプ段々わかってきたかも…」

柊さんは可愛いより綺麗な人が好きだ。スラリとしたモデル体型を好み、感度十分で喘ぐ声に艶がある人がいいらしい。
散々聞かされた結果、今では女のことならば柊さんを熟知している。


「あー、でも物足りないンだよなー」
「なにがです?」
「結局お前に勝てる奴がいねー」
「…は?」

なに言ってんでしょーか?この先輩?理解不能。思わず横を見れば横目で見られていた。そして不敵に笑ってみせ、言葉を繋いでいく。

「胸もお前のものがいい」
「はぁ?」
「尻だって柔らかそうだし」
「ちょ、っ」
「声だって艶あンぢゃん」

太ももに手が這う。片腕で引き寄せられ仰け反るがこの人案外馬鹿力でびくともしない。這う手が胸に当てられやんわりと揉む。それに恥ずかしくなり、手を振り上げようとすれば揉んでいた手が離れ、そしてその手が手首を掴んでーー阻止された。

「ん、」
そのまま唇が重なり、行動は不能。ヌルっとした舌が捻じ込まれ、逃げ場を失う。

「ふっ、ん」

羅列をなぞられ、引っ込んでいた舌を無理に絡ませられ吸われればぞくっとした得体の知れない感覚が背筋をなぞった。脳内はスクラップ状態。考える暇も与えない強引で優しいキスがわたしを襲い、リップ音と同時に離されれば余裕のない柊さんの顔が見えた。


呆気にとられて何も言えずに荒い呼吸を整えていると柊さんの指が耳をなぞり上げれば「ぁ、」と小さな声が出てしまった。

「感度もいい」

煩いと怒鳴ってやりたかった。
耳に舌が這えば、そうもできなかった。
「まっ、柊っ…さん、ひゃっ」
「かわいい」
耳元で話すな!!抗議も出来ずやられるままなわたしもどうしてしまったんだろうか。
強く抱きしめられ、身体も動かない。多分それはウソ。本気を出せばそんなこともないのだ。

「しゅ、うさん」
「全部満足できない」
「…っ」
「お前がいい」

だから耳元で話すなって言ってるでしょ!!
それでもなにも言わなかったのはわたしが満更でもないからだと、そんなわかりきった理由だけで、熟知してるなんてのも嘘で、

「お前しか見てなかった」

この言葉さえウソであってほしいと思った理由はわたしがこの人にハマってしまうことなんて目に見えていたからだ




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