「さみー」
「ねー、でも柊ちゃん手あったかい」
「そりゃ、よかった」

さてさて、先程は何かあったでしょーか?とボケたわけでもないですけど、普通に年越ししたいから冗談交じりそう言って手を握った。

「きょー、ウチくるか?ってか今更かえれねーもんな?」
「確信犯でしょ」
「わかっちまった?」
はは、と笑えば紗枝も綺麗に笑った。あんな場所で作り笑いをさせとくのは全く勿体無い。

「参拝して、さっさと帰るぞ」
「あら、二人っきりがいいの?」
「当たり前ぢゃンよ?なンのために捨て身したと思ってンの。それに、風邪ひいちまうっしょ?」

上着を貸してはいたけれど、紗枝の格好は肩口も背中も開いている視覚的には頗る悪いセクシーなドレスを身に纏っている。多分、否、此処が自宅ならそのまま頂いてる。寧ろ、その格好は好みだ。けれど、この寒波にその格好は不釣り合いでいて寒いだろう。

「柊ちゃん優しい」
「はぁ?いつもっしょ?」
「いつも意地悪ですよー」
「愛情表現」
「わかってる」

有名どころの神社の人混みは殺人行為だ。ってかあたしは人ごみが嫌いで、紗枝もあまり好きではないと思う。それと今更行っても電車に乗ってる時に年越しなんてごめん被る。
逃げてきた先の変哲もない道路をなんとなく二人で歩いて、携帯でマップを開く。最近のマップは細々な小さな神社も写してくれるもんだから結構助かる。着いた先は小さな小さな神社。それでも疎らに人はちらほら。多分この神社を愛する地元人とみた。

「案外人いるわね?地元の人かしら?」
「大半はソーだろ!あとはちいせー神社のがいいって言う考える事が一緒の人間だろ」
「ま、でもすいてるほーね」
「まちがいねー」

ちょっと並べば直ぐだ。あたしと紗枝、並ぶ暇潰しに甘酒を貰いちびちびと飲んだ。流石のお堅い紗枝も此処で、未成年っていう咎めの言葉は出なかった。寧ろ、飲んでいる。そえしてたわいも無い会話で穏やかな時間を過ごせば案の定、そんな時間も掛かることなく自分たちに順番が回る。

「柊ちゃんここもって」
「ん?」
「一緒に」
「あいよ」

上から垂れ下がる太い綱を二人で握る。一回顔を見合わせば嬉しそうに細めた紗枝の顔があった。あー、やっぱ無理したかいがあったわ。動かなきゃこんなシアワセな時間なかったかも、と賞賛。そしてちょっと罪悪感。葛藤なんて柄にもないから今この時を噛み締める事にした。

「…反則」
「ナニよ?」
「今の顔よ」

意味わかんねー、でも紗枝は不服そうに唇を尖らせるから後ろに並ぶ人とか関係なしにそっと触れるだけのキスをした。

「反則…、本当に」
後ろでもこしょこしょ、なんか言ってるし隣でもボソボソなんか言ってるし。ま、いいか。

「後ろ、つっかえてっから早くヤッちゃいましょ」
「誰のせいよ!!」

赤くなった顔がプイッと前を向いた。けれど、綱を握るあたしの手に紗枝の手が重なる。あったかいわ。本当に。ちょっと熱くなる頬はさっき飲んだ甘酒の所為だと思ってゆっくり綱を揺すった。










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