「お前でもふざけたりすんのかよ」
「オイオイ、そりゃ人間なンだからおふざけの一つや二つあるっしょーーーってあたしをなンだと思ってンのよ?」

背中に硬い感触が触れる。切迫感はメンタル面ではなく逆に身体的だと密接しそうな程近い他人の身体に顔を顰めた。自分の視界で動く長い髪が垂れ下がっている。それを掴んで引っこ抜いてやろうかと思うぐらい不敵に笑うこいつの顔は若干自分よりも高い。それだけでまた苛立って睨み付けてやる。つり型の大きな目の奥に潜む要望さえ気付かぬフリをして。

「ぢゃぁ、ふざけんな」
「ンア?ナニ?おふざけだと思ってンの?」
「ちげーのかよ」
「しらないね」

ーーーはぁ?意味わかんねー。そう言ってやろうと思った。思っただけで、実行できず。先手を取られ遅れを取ったのはこっちのほうだった。動く事も出来ず、ーーあぁ、剣じゃ有り得ねぇな、と思ってやってもそれが負け犬の遠吠えのような気さえする。言葉さえも奪い取るそれだと言うのにうざってーったらありゃしねー。

「なンだ、てっきり殴ってくるかと思ったンだけどさ…どーしたよ?威勢がいいのがアンタの長所ぢゃないのかよ?」
「そりゃ短所だろーよ」
「わかってンのね」

ケラケラと笑うなよ。うざってー。吐き出す言葉はまたも奪い取られて本日二度目。

「…おい、ふざけんのも大概にしろよ」
「しらねーよ」
「わけわかんねー」
「あぁ、そうだな」

燻る熱がこっちにも落ちてきそうな瞳で見てるのにもわかっている。

「大胆不敵すぎるんだよ。おまえ。思ったら即行動かよ。案外単純なのな」
「そーいうアンタは無駄にグルグル考えて度ツボにはまっていくパターンの人間だと思いますけど?案外複雑?いや、でもバカだから、そー考えると適応力あンのかね、、今みたいに」

その顔がむかつくんだよ。狙った獲物を今まさに捕獲しよーとするその肉食的な顔つきが。自信満々に堂々と存在するお前自身も。
ーーーーちげーよ、ばーか
適応力があるんぢゃねー、認めたくねーがそんなお前がこの上なく苦手な部類で目指すところの面構えなんだよ。ばーか。
だから動けないんだ、ただそれだけ。適応したわけでも考えてるわけでもない。ただそれだけなんだよ。

だというのに目の前にいる人物はそれ以上もそれ以下も動いてくれない。与えてくれない。蛇に睨まれた蛙のようだと思った。
ーーーいい加減どけよ。

曖昧で確固たる断言も行動もしない無責任なこいつはまた器用に優しく言葉を奪い取っていった。






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狙う柊ちゃん
狙われた玲
無機質なやり取り




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