「綾那、あからさまに嫌な顔しないでくれませんかね?」
この世の終わりとでも言うように項垂れた綾那は耐えられないと言わんばかりに手を握り締めて震えている。え、そんな嫌なの?

「綾那の唇がポッキーに沿って近付くとかヤバイ。ヤバイヤバイ。あたしも近づいていいんだよね?いいよね?ヤバイ!もー、ヤバイ言い過ぎてヤバイ」
「あなた気持ち悪いすぎてヤバイわよ」
染谷さん、褒め言葉として受け取ります。

二番と三番はポッキーゲーム
(目は閉じちゃ駄目。折れたら、ひつぎの要件をのむ)

二番はあたし。三番は机と同化しそうな勢いの綾那。
「なんで要望多いんだよ。しかも、折れたら会長の要件のむとか、、き、きす…しろって言ってるもんぢゃないかぁーっ!!」
「いやん、綾那。キスだなんーーぶへぇっ」

鉄拳が頬にクリーンヒット。愛の鞭にしちゃちょっと強いんぢゃないの?綾那さん。
「早くやっちゃいましょうか」
若干先ほどの愛の告白でご機嫌斜なお姉たまは急かす。ポッキーを手にしてあたしの顎を掴みポッキーが突っ込まれた。有無言わさず口に咥えさせられたのはいいが端っこ折れましたけど、、
「ただでさえ短いポッキーが余計短くなったぁぁーーー!!新しいのは?新しいのっ!?」
「あ、わりぃ。食べた」
「なにしてんですかぁーーっ!男女ーーっ!!」
「失礼な。玲はベッドの中では受「紗枝ーーーっ!???」

咥えたポッキーは若干短く、お姉たまに顎を持たれて少なからず有頂天になるわたし。ふわんっと頭がどっかいっていた。
「あー、もう!早く終わらすっ!!ーーーーー順!!」
ふわふわとお花畑にるんるんとスキップしていた脳が胸ぐらを掴まれ勢い良く引き寄せられて現実世界へ。「んーーっ?」と変な声が出た時はどアップに綾那の顔面。待って待ってっ!心の準備が…。そんなことを思ってる暇にカリッと綾那の顔が近づく。(へ?綾那さんこんな積極的なのはとても嬉しい限りなんですが、わたしには夕歩っていう心に決めた人が…っていつの間に斗南さんの横に移動しちゃってんの!?ねぇっ!?)

「はやふ、くぅえ」
「おひ、あやなぁ。しゃべっひゃら、ぽっきぃーおれひゃう」

場外では、うわーっ。だとか、珍しい。だとか、あらぁー、だとか言いたい放題。ここまできたら仕方ない。最早攻めるのみ。わたしは大きく一口ポッキーを食べる。
「ーーっ、」
驚きに綾那の目が見開かれて少し仰け反った。それを追いかけるように前かがみにもう一口。焦っている事は目に見てわかる。しかし、負けじとあちらも応戦。眉を顰め、意を決して一口前へ。あら大胆。順ちゃんうれしーなんてポッキーを咥えてなければ叫んでいたに違いない。

調子に乗って近い綾那の腰を引き寄せればはたかれた。諦めず今度は逆手を出そうとすれば触れる前にはたかれた。
(痛いよー、綾那ぁーー)

「器用ね」
「そーね」
「顔は動かさず」
「下では激しい」

染谷とお姉たまの発言は結構危ない気がする。全部聞こえてますけど。

カリッ、カリッと徐々に縮めて既に綾那の鼻先があと少しで付きそうになって冷戦。どうしようかと、悩みに悩んで、また一口。
鼻先が付いた。
「〜〜〜ーーっ」
綾那は思わず目を閉じた。ギュッと閉じられた瞼。(あ、キスしたい)
「無道さん、目あけてー」
悪魔の囁き。お姉たまはあろうことか綾那の耳元でそう呟く。ピクッと肩が微動。危うくポッキーが折れる寸前だった。

(ってか、これ…どこが終わり?)

嫌な汗が伝う。何が負け?何が終わり?どうすればいいの??なにこの状況。パニックに陥るわたしの前方には睨む夕歩。
(ど、どどど、どーしよう…これ)

時間が止まった気がした。
その瞬間、バンッと扉が開かれる。
「じゅんじゅん、だめーーーっ!!綾那はあたしの嫁だぁぁあーー!!」
「ぶっ!!」
「「「「あ……」」」」
不穏な空気が流れるがそれは一瞬。一蹴にした人物は綾那の背中におもいっきり抱きついたらしい。衝撃と共に数センチのポッキーは粉々。かわりに押し当たる唇。

「うわぁぁぁあーーーっっ!!!」
あたしは目を見開きただ呆然。目の前には血祭りパラダイス。流血沙汰のはやてちゃん。
「ぐかだぁぁあっ、ぬぁーーー!!」
「あ、あやなっ」
尚、収まらぬ凶暴な虎は雄叫びを上げて釘バットをぶん回す。止めようとする夕歩が引きずられている。

「ぶはっ」
「やっば」
「く、くく」

上から神門さん、斗南さん、お姉たまがたまらず笑う中、染谷が真顔。そこで今しがた自分が置かれている状況が理解され、顔が自然と熱を持った。
(わーーーーーっ!あやなとちゅぅーーーっ)

立ち上がる。きおつけっ!!礼っ!!
「ごちそうさまでーすっ!!!ーーぶっ!」

染谷の踵が脳天に直撃した。




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