一番は五番に愛の告白(ガチで)

「一番はだーれだ」
ご機嫌な声をあげたのは紗枝でぶっきら棒に手を挙げたのは柊。焦ったのは柊の斜め前に座る夕歩で自分の手にある白い紙を握り潰したのは夕歩の隣に座る順だった。

「ちょ、なんであたしぢゃないんだぁーーー!よりによって凶悪面の斗南さんが夕歩に愛の告白だなんて、順ちゃん耐えられません!!」
煩いと一言。綾那が順の頭を殴る。
(サラッとひでーこと言いやがる…)
柊は仕方なしに重い腰を上げて鬱陶しそうに長い髪をかき上げた。始まりはひつぎの一言、王様ゲームをしたいという我儘から始まりは総動員されたこのメンバー。王様誰だなんてひつぎ以外の何者でもない。そう、皆被害者だった。

「えっーと、なに?…愛の告白?だっけ?それやりゃいいんしょ?」






プルプル震える身体を上から眺めていたけれど気の毒すぎて正直どうしようか悩んだ。俯いてしまって表情は見えない。そういえば、こいつと話したことあったっけ?と思い返してみてもそれが無駄な事がわかった。記憶上静馬夕歩と話した事なんで皆無だったからだ。取り敢えず、視界の片隅でニヤニヤする祈がうざすぎる。(なんだよ、あんたも楽しんでんのかよ)ひつぎ以外の強敵だよ、本当。

「夕歩」
始めての会話で名前を呼ぶなんて本当よくねーよ。しかもゲームだなんて、笑っちまう。
ビクッと揺れた肩を見逃さなかった。しゃがみ込んで視線を合わせようと試みたけれど一向に目は合わない。安心させるように頭をやんわりと撫でてやる、軽く小声で「ごめんな」と呟けばやっと視線が合致した。
それでも耳まで真っ赤な静馬の視線は落ち着く事なくあっちへ、こっちへ。いい加減集中してほしい。終わらねーぢゃんよ。

急かす気持ちはあってないようなもの。撫でる頭はそのままもう片方の手は静馬の右手を包んだ。途端顔を上げた。唇が何かを言いたげに開くが言葉が出ない。そんな静馬を見てこりゃ、あの護衛隊長がゾッコンなわけだと思う。手を繋いだ時に感じたのはあー、やっぱ小せえ、だった。まぁ、こんな印象。

「夕歩聞いてくれるか?」
何時もより若干低めで尋ねる。ちょっと煩いのが約一名いるが無視をした。
「は、はい…」
なんだよ、その反応。まぢで告白してるみてーぢゃねーか。まぁ、なんだ。王様の命令にはガチでって書いてあったからしゃーないけど。それでもなんでこんな初心なんよ?あたしは頬に集まる少しの熱に気付かないようにした。実際こっちまで恥ずかしくなってきてしまっていた。

沈黙。周りは一段と静かだった。珍しいとさえさ思う。誰かぎ生唾を飲み込んだ。あたしはそんな空気をぶち壊すように滅多に見せない無邪気な笑顔ではにかんだ。

「!」
そして穏やかに、まるで愛しい人を見るように、、(実際思い浮かべた…本人の前ぢゃやんねーけど)微笑み握る手に力を入れた。頭を撫でていた手は頬まで滑らせ、手を当てた。

「好きだ」
「ーーーっ」
「夕歩のことが好き。ーーーだから付き合ってほしい」

おいおいおい。周り、食い入るように見るな、聞くな。すげーはずぃ。あー、こいつらの脳内であたしの印象とか実物とか壊れちゃってんの見え見えだわ。その顔。ってか固まりすぎっしょ。目の前のお姫様…

もういいかと、そう思った瞬間握っていた手にギュッ力が入る。(へ?)訝し気に夕歩を見れば潤む瞳に睨まれていた。今度はあたしが焦る番で、内心どきまぎしていた。(や、やべっ。怒らせちまったのか?)咄嗟に頬に当てていた手を引っ込めたけれどその手さえ掻っ攫われた。本格的にどうしたらいいかわからずただ沈黙で呆然。周りはただその状態に息を飲んだ。一人は最早、号泣。膝を抱えて隅っこで体育座り。睨まれている視線は痛かった。

「ど、どうした?」
隠そうとしたけれど無理だった。声が慌ててる。
「ーーー」
「へ?」
小さな小さな声。あたしだけがそれに気付くようなそんな少量なのだから周りは静馬が何か呟いているということさえ認識してないと思う。あたしはもう一回聞き直した。今度はだんまり。いい加減苛立ったあたしは掴まれていた手を掴み返して引き寄せた。

「なんだよ?言えって」
耳元で言えば息を飲むのがわかった。次の瞬間、空を切る何か。それに気付いたあたしは静馬と間をとって回避。
「うおっ」
「夕歩ぉおーー!!」
顔面スレスレで通ったのは綺麗な脚。横を見れば黒いオーラを放つにんまりと笑った祈だった。

「はい、そこまで」

突然のゴング。強制終了。
「夕歩っ、ゆーほぉ。浮気は駄目って言ったでしょぉおーーー」
目の前の静馬はくてっと力が抜けていつの間にか横に来たナイト様に頭を預けてノックダウン。(勝った)
しかし、仁王立ちの祈が物凄く怖い。般若だ。嫌な汗が滲む。どうご機嫌取りをするかを脳が勝手に考え始めていた。


「やるわね、斗南さん。くだらないと思ったけど、なんか燃えてきた」
「ゆかり、その発言はやめときなよ。誰が被害者になるのかわからないから」

一筋縄ではいかない王様ゲーム。多分、否、間違いなく。この王様ゲームの後なにかしら起きるに違いない。

あたしは仁王立ちに立つ祈を見上げてそっと思った。




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