ヤンデレな染谷さん



ぺらっとめくったスカート。今日の色は黒。しかし、なんだこれ。もっと女の子らしいパンツは履けないのか。と顎に手を当てて観察していればこめかみに鈍痛。

「お前はなにをしてるんだぁーーー!ゆ、ゆかりッ、こいつどーにかして」
「そうね。こいつとは誰のこと?とりあえず綾那のスカートをめくっている変態ならわたしには見えないわ」

オイッ!!見えてるだろーっという綾那の声を無残までにスルーしたゆかりの傍で転がる順は半ばノックダウン。今しがた怒鳴り声に負けないほどの鈍い音が鳴ったと思いきや順はゆかりの足元まで吹っ飛んでいた。

「はげしい…」
「やめろ。誤解をうむ」
「ま、ゆかりはもっとはげしいけど」
「やめろ。いらない誤解をうむ」

ハァハァっと肩で息をしていた綾那がフゥーっと息を整えると釘バットを握りしめた。背後に鬼。ところでそれどこから出したの?ダラダラと嫌な汗が滲む。思わず傍にある大好きな人の大好きな足にしがみついた。

「ちょっとあたなわたしのこと好きならその汚い手で触らないでくれる?」
「え、ちょっと待って?染谷さん?それ逆ぢゃないの。」
「綾那。この残念な脳内ピンク変態エロメロスをどう好きにしても構わないけど血痕はちゃんと始末して。証拠を無くすことが完全犯罪の鉄則よ。とりあず、亡骸はわたしの部屋に持ってきて。一応これわたしの所有物だから」
「ちょ、モノですか?わたし?しかもこれなら死ぬの?」
「わかった」
「綾那さんも承諾しないでーーーー!」

ーーーーーーではよろしく。
そう言うやすぐに抱きついてた足が動く。勢いよく足を前に突き出し、その衝撃で足から手が離れた。
「うわっ」
まってまって、ゆかり、薄情者。おいていかないでよ。目の前に鬼がいる。やばいってこれ。喚き散らし、それでもこの現状は自分で蒔いた種ではあるけれども、少しは助けてくれるとか心配するとかはたまた、負であっても呆れるとか怒るとかないわけ?と悶々と言ってみたところでどんどん遠ざかる背中はそのまま。逃げ出したいが綾那が先ほどからわたしの背中をグリグリと容赦無く踏んづけている。
ふと肩が揺れ、首だけがうごく。
ーーーーグッドラック
綺麗な唇が弧を描きそう言った気がした。
「ゆかりーーーーー!!」
悲痛な叫びは廊下に虚しく響いただけであった。







「あら生きてたの」

ーーーー以外ね
ーーーー綾那も爪が甘いのね

散々痛めつけられ血反吐を吐く思いをしてボロボロになり、それでもと愛しい恋人の部屋(今は一人部屋なので)に必死に逃げ込んだそんなわたしにはゆかりはそう一言。ーーーあはははは。これもまた仕打ちですか?

「順、生きてるならこっちきて」
「はいはい」

手を貸すとかしてほしいけどもゆかりがこっちにきてと言うならすぐ行かなきゃ。疲れきったように背後から首に腕をまわす。

「あー、ゆかりだー。いい匂い〜」
「匂いを嗅ぐとか犬と同じね」
「ゆかりの犬とか笑えない〜」
「どーでもいいから前から抱きしめて」

本当かわいいなぁ〜。と口角をあげてニヤニヤ。そそくさと前に移動する。そのままぎゅっと頭を抱いた。二人の時はデレるゆかりさんがどうしようもなく可愛いんだからしかたないよね。だってこの人わたしのだよ。モノとかじゃなくて、わたしの腕の中で可愛く鳴いたり、震えたり、悶えたり。普段はなんかもー、恋人ですか?って他人にも聞きたくなるけど、、、(他人に聞いてもしかたないけど)

「ちょっと、変なこと考えてるでしょ」
「うん。だいぶ」
「あら素直」
「そこで嘘ついてもね〜。その髪の毛」
「ん?」
「イメチェンだよ。ちょー可愛い。傷がよく映える。順ちゃんはゾクゾクしちゃうね。その顔が快感に歪むとこ」
「変態」
「光栄です。褒め言葉です。これ以上ないっていうぐらいの」
「本当にしかたない人ね。嫌いじゃないけど」

いつの間にかゆかりの膝の上に跨って首に腕を回していたら徐々に近付くぷっくりな唇。魅力をも凌駕するその欲情感たっぷりの誘いがわたしのもっとも恐る脅威でしかなくて、リミットを容易に壊す。
どんなものより怖い。
そうだなぁ、綾那の鬼をも可愛い猫に見えるほどに。
そうしてわたしは飴と鞭に酔い痴れる。そのまま手を出す。おもいっきり抱く。それでも答えてくれる。この人はわたしを甘やかす。
持て余す全てのわたしを受け止めてこういうのだ。

「順、愛してるわ」













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