いきなり斗南さんの部屋に行くと何時だって彼女は呆れたように顔を顰めるばかりだけれど時間を共有したがっているのは寧ろ斗南さんだと思うのだがどうだろか。
決して追い返したりはしない。今だって私は突然押し掛けて勝手に何時もの定位置である斗南さんのベッドを占領している。
斗南さんは微動だにせずベッドを背もたれにに目の前のテレビを多分、なんとなく見ているだけだ。

「なぁ、祈似のガキって可愛いと思うンだけど…」

そう、この時間は何気ない会話が飛び交う。
昨日は結婚式場とかってやっぱ凝ったりすンの?で、一昨日は結婚は何歳がいい?だった。その前は養うための仕事問題の討論だったり、何時か既に忘れてしまったけれど住む場所だったり、親への挨拶だったり。

「わたしは斗南さん似の男の子がいいわ」
「やだ」
「なんでよ?」
「嫌だから」

ピアスが光る。やっと動いたと思えば振り返って真っ直ぐわたしを見た。どうしたの?さっきより不機嫌?別にと答えられた。きっとわたしはもう知っているのだ。その理由も。

「祈似の女の子がイイって言ってンの」
「あら、わたしは嫌よ」
「なンでよ?」
「嫌だからよ」

不貞腐れてしまった彼女は目線を外して再度テレビに向き合ってしまった。ウエーブが掛かる髪の毛を一束掬えばさらさらと指の間からすり抜けていく。それを何度も繰り返し「ねぇ」と呼びかければ目の前の後頭部がベッドに沈んだ。やっと見えた顔はまだ幾分か不機嫌ではあったけれどそれよりも逆で見上げる顔が綺麗で見惚れてしまう。

「斗南さんの子供ならどっちでも可愛いし愛しくてしかたないと思うの。でも、まだ…、斗南さんを一人占めしたい、かなぁ…」

綺麗な斗南さん。大人っぽい斗南さん。きっと綺麗で可愛い子供に違いない。だけれど、まだその瞳に映るのは自分だけであってほしい。

「なんだ同じぢゃン、、、あたしもまだ祈を一人占めしたい」
「素直、ね」
「あンたが素直だから調子狂った。それにこの時間はあたしにとって素直になる時間なンで…」
「わたしはいつも素直よ」
「ウソつけっ!ーーーま、そんなどうしようもない未来がいいのはウソぢゃない」
「そうね」

例えば男の子だったら、例えば女の子であったら、そう想像して嬉しくもあって楽しくもあって、愛しくて、ずっとあなたといたくて。そして少しの痛みと切なさをわたしもあなたも見ないフリをした。







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -