駆け引きと言うには未熟で恋と言うには濁っていて愛と言うには自分と云う人間には程遠くて、すーっと全身が冷たくなるような感覚だけが事実だった。


ーーー今日の天気予報は、
電子的な画面から流れるなんの味気も問題もない声が問題のある事を告げてこれまた外を見なくてもわかるぐらいの大粒が屋根と反発して大きな雨音が鳴っていた。
「雨だって」
「ンなの、わかってる」
隣でのそのそと緩慢な動きで寝返りを打つ斗南さんの片手はリモコンを捕まえる。チャンネルを変えれば映るのは違う天気予報。諦めた腕はリモコンを放り投げた。
「あー、もー疲れた」
「どれだけ体力ないのよ」
うるせーと煙草を咥えて火をつける。火をつける体力はあるんだー、ど言えば横目で睨まれた。すくめるように見せてわたしは露わになったものを隠さずに上半身を上げた。
「少しは恥らえよ」
「そんな格好で煙草吸ってる人に言われたくない言葉よね。それに今更感しかないわよ」
「あー、ちがいねー」
例えば煙草の匂いは好ましいものではなかった。言っていまえば嫌いな部類であって、しかしそれをわざわざ言う気もない。例えばわたしたちは付き合ってない。現在進行でそれは変わらないことでそれを告げるつもりも、聞くつもりもない。例えば行為中に優しいキスはしない。言ってしまえば欲をまさぐり合うディープなものしか出来ない。例えばその意味のない行為が意味もないのにまるで意味ありげなように思えてしまってるのがたまらなく嫌いだったりする。例えば、燻る身体はウソではないけれど間違えなく芯は冷えていく感覚が耐えられない程悲しく虚しいということさえも伝えられない。
「埋め合わせはするわ」
「なんの話だ?」
そう、いつからか言わなくてもいいということが聞きたくもないということが、伝えられないのだと、聞くことができないのだと分かったのは一体いつだっただろう。悲しい、虚しい、それでも反応する身体が恨めしく思い始めたのはいつからだろう。
「…さ、よ…なら、ってこと」
「…」
「自分勝手よね。だから埋め合わせはするわ」
「ちなみにその埋め合わせのナイヨーは?」
「そうね…」
ーーーもう会わないってのはどうかしら?
最初に求めたのはわたしからだった。嫌いではなかったから、という理由から彼女を縛っていたのだ。優しい彼女は受け入れた。ただそれだけ。始まりはそれだけ。

わたしは彼女の目が見れずにいた。いつだって見てはいなかった、見てなかったということが見れないということに変わった。ただそれだけ。全部そう。全部全部それだけというだけなのに、その逆転されたことでこんなにも苦しい。
「それって埋め合わせにはいンの?」
「そーよ、ね」
わからない。わからない。どうしたってこのあとのことがわからない。理由も意味も言葉も探せないでいるだけのこの関係が嫌で嫌で、、必要不可欠。
「バカなのな?アンタ」
わかってたけど、続けてわたしの目元をゴシゴシとシーツでこすられた。
「泣くンなら全部忘れちまえよ」
露わになってるソコに手が這う。突然の刺激が先程の行為を思い出させて熱くなった。漏れた声と中をまさぐる指にまた涙がジワリと浮かんだ。
「泣くな」
何度も言う。泣くな、泣くな。ちゃんとアタシを見ろ。それでも溢れる水は止まってくれない。拭うように目元に唇が当たり真っ赤な舌が下から上になぞられた。
ーーーぁ、と…なみさぁ、ぁ、ぁん
「くだらないこと考えてないで集中してくンねーか?」
だってだって、曖昧なこんな関係があたりまえのようにあなたを縛っているというのに、こんなにも罪悪感で後ろめたいのに、潰れてしまいそうな悲しさとか寂しさに……そうおもってるのになんで?なんで?

我慢ならない喘ぎ声を必死に抑えた。抑えた結果唇に滲む血が口内で苦く感じた。それさえも奪うように唇が重なる。舐めるように絡むように舌が蝕む。


この頃、わたしは自分の未来が見えない

それが怖くてただその腕に抱かれて安心を得るような生き物でしかなかった。






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スタートも間違えた結果言葉を伝えられない柊ちゃんと紗枝ちゃん








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