休日の昼下がり、携帯がぴかぴかと煩しく光り、メロディが流れた。充電器につないでいるそれは、いまだに布団にくるまっている私から少し離れた場所にあって、取りにいくのが正直とてもだるい。これは気持ちだけの問題じゃなくて、朝目が覚めたときから体がだるくてしかたないのだ。
 光ると同時にバイブレーションも鳴っているから、たぶん電話だ。布団からでると思ったより寒かったから、ベッドの足元でぐしゃぐしゃに丸まった毛布を引っ張ってきて適当に体に巻きつけた。くらりと立ち眩みをしたけど、きっと体がまだ寝ぼけているだけだ。
 すっかり充電し終わった携帯を充電器からはずしたと同時に、私はその場にへたり込んでしまった。ディスプレイを確認すると、そこに表示されていたのは[志摩廉造]の四文字。彼の頭髪と同じピンク色のイルミネーションが、すごくまぶしい。

「……、もしもし…?」
『あ、もしもし、名前?』

 電話口から聞こえた廉造の声は、塾でことばを交わすときのそれと何ら変わりはなくて。ただ、電話特有のノイズだとか、少し音が遠い感じが、堪らなく寂しいと感じてしまう。

「…っ、なに、いきなり…」
『声聞きたいなー思て。』

 声がききたい。廉造は確かにそう言った。それにしたって、どうして今じゃなきゃだめだったんだろう。頭がくらくらする。何かいわなきゃ。廉造のことばに応えないと…考えれば考えるほど、頭が重くなって、ぼうっとする。座っているのもしんどくて、なるべく音を立てないように床に横になった。

「…うん……」
『ん、何か言わはった?』

 ディスプレイに映し出された名前みて少しほっとしたんだよ、なんて言ったら廉造は、私らしくないって言って笑うかな。もういっそのこと笑い飛ばしてほしいな。……笑顔が見たいよ、廉造。

「…れんぞう、────────」


▽ ▽ ▽



 目が覚めたとき、最初に見えたのは二段ベッドの天井だった。二番目に見たのは、ベッドの縁に頬杖をついて私をじっと見つめる廉造。状況がいまいち呑み込めない。

「…廉造?なんで」
「なんで、て、覚えてへんの?」
「うーん」

 廉造曰わく、電話の途中で私が返事をしなくなったから心配して部屋まで来てみたら、床に倒れ込んだ私を見つけて、ベッドまで運んだ。見つけたとき、私は熱に魘されていたらしい。頭がくらくらしたのは立ち眩みじゃなくて熱があったからなのか。

「…ありがと、来てくれたのが廉造で良かった」
「…どういたしまして」

 窓から入る陽の光は橙と群青が入り混じっていて、結構長い時間眠って──気を失って──いたのが分かる。おでこに乗せられたタオルは、まだひんやりとしていて、今し方乗せられたのか、それとも、廉造がずっと傍に居て、取り替えてくれていたのか。

「どうして、私が寮にいるってわかったの」
「勘」
「わ、エロ」
「ちょっとヒドない?」


120317

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