正義のヒーロー
『美味しかった!やっぱり毛利さんも食べたらよかったのに、ケーキ』
「好まぬと言うたであろう…土産はよかったのか?」
『勝家くんたちとは、今度一緒に来るから大丈夫!…です!』
「そうか、それがよい」
『うん!じゃなくて、はい!』
「………」
ケーキ屋さんを出て、私は毛利さんと一緒に自分たちの町へと帰っていた
次までには、私たちの町にもケーキが食べられる場所できてたらいいのに。そう呟くと彼は、そうだなとぶっきらぼうな返事
ただ私を見ることはなくても、まだ小さな歩幅に合わせてくれる
それが嬉しくて歩く速さを変えて遊んだら、頭を叩かれてしまった
「まったく…あの男は貴様のどこを気に入ったのか」
『オジサン?』
「ああ、このような女児に執着するなど…変態か」
『オジサン、ヘンタイさんなの?ですか?』
「…我がそう言うたなど、告げ口するでないぞ」
『ん…うん!毛利さんと私の秘密にするっ指切りげんまん?』
「ああ…まぁ加え、近頃は世間の目など面倒ゆえ。下手をすれば誘拐と間違われ―…」
「うわぁあ゛ぁあぁんっ!!!ばる゛ざまぁあ゛ぁあ゛ぁあ゛っ!!!!」
「な、泣くなっ!!私について来ればいいと言っているだろう!?」
『え?』
「………」
毛利さんと話していたその時、道路の向こうから大きな泣き声と怒鳴り声がした
一緒にそっちを向けば…そこには泣きじゃくる男の子と、その前に立つ髪の長いお姉さん
……………。
『……誘拐?』
「指をさすな結、他人のふりをしてやり過ごすぞ」
『他人のふり?じゃあ知り合いなの?ですか?』
「・・・・・」
「ん?おい、そこのお前っ!!」
『あ……』
「チッ……」
私たちに気付いたお姉さんは、その男の子の手を掴んでズンズン近づいてくる
お姉さんと毛利さんを交互に見つめていると、毛利さんはみるみる不機嫌な顔になった。ただしその視線は男の子の方へ
「う゛ぅ…!は、ばる゛ざま、ばる゛ざまがぁあ…!」
「すまないが、この子供が連れとはぐれたらしいんだ。はるさま、はるさまと呟くばかりで…」
『あ、誘拐じゃなくて迷子なの?』
「は?」
「結、」
『しーっ』
「…まぁ、いい。おい!名前は何だ?家はどこだ?」
「う゛ぅ、ひ、ひとに名前をきくときは、まず自分から、て晴さまが…!」
「ぐ…!直虎だっ!!いいから名乗れっ!!!!」
「ひいっ!!?ぅっ…う゛あ゛ぁあぁあんっ!!!!」
『あ、泣いちゃった』
「まぁそうなるであろう」
「ぐぅ…!」
『ねぇ、お名前は?私、柴田結っていうの初めまして!』
「……山中鹿之介です!」
「何故泣き止むっ!!?」
「まぁ当然であろうな」
鹿之介くん、は勝家くんよりも年下なようだ。私の顔を見てニッコリ笑ってくれる
それを見て毛利さんが、ませたガキめ、とボソリ
「ぼ、僕、晴さまを探してるんです!いっしょに、お出かけ、してたはずなのに…!」
「やはり迷子か…!こんな幼い子供を置いていくとは!どんな男か確かめぶん殴ってやる!」
『ぶん殴るまでいくんだ…』
「放っておけ、我らは行くぞ」
『でも毛利さん!この子、困ってるし…』
「いい子だな、お前…!それに比べなんて薄情な男!」
「はぁ………尼子ならば駅前におった」
『え?』
「挙動不審であったゆえ、このガキを探しているのであろう」
「晴さまっ!!?」
「なにっ!!?駅前だな、行くぞ鹿之介っ!!お前を見捨てた男を懲らしめるっ!!」
『話がだんだん、盛られていってる…』
鹿之介くんの腕を掴み、駅の方向へ走っていくお姉さん
晴さま…いや、尼子さんという人は無事に鹿之介くんと家に帰ることができるのかな
そして…
『やっぱり知り合いだったの?ですか?』
「ふん…関わるつもりはなかった、面倒ゆえ」
『でも毛利さん、二人に晴さまさんの居場所教えてあげた!…ですっ』
「…………」
『やっぱり毛利さん優しいですっ』
「っ………」
道の向こうに消えていった二人から、毛利さんに視線を移す
見上げた彼は少しだけ驚いた顔をして、でも、直ぐにさっきと同じ表情へ戻り…やっぱりボソリと、呟く
「我は…優しくなどない」
20140927.
元就様とは少し妙な関係
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