運命の輪

  正義と力


「コラッ!!お前たち…さっきからコソコソと盗み聞きか?」

「ち、違うんです!これは社会見学のいっかんですっ」

「マリアの、あろうことか毛利の何を見て学ぶんだっ!!?」

「え、えっと…!」

「み、見てください!今まさに結さんに男の魔の手が迫ってます!」

「何だとっ!?おい貴様っ!!結に何をし―…」

「やめろ、直虎」

「っ…!何故止める孫市っ!!」




やれやれとため息をつきながら、私の腕を掴み引き止める孫市

その間に鶴姫と鹿之介は逃げていった。アイツらに男女の話はまだ早い!




「反応を見る限り、お前にもまだまだ早い気がするがな」

「う、うるさい!私のことはいい、しかし、止めるな!結に何かあったらどうするんだっ!?」

「何も起こりはしない。特に今はマスターが一緒だからな」

「くっ…!」




ニッと笑った孫市が指した先には、上機嫌に結を見守るマスターがいた

確かに、あの男は結を何からでも守るだろう。だが…!




「…あれも男であることに変わりはない」

「お前の男嫌いも大したものだな。いや、女に対して過保護過ぎるのか」

「孫市は例外だぞ」

「…何故だ、納得できない」

「とにかく!私は…あの男の欲が恐ろしいんだ…」

「…………」




この町に生まれ、この町で育ち、出会った彼女たちを守ろうとこの町に止まっている

だが…あの男が現れてから、この町は何かおかしいんだ




「確かに…な」

「私には、あの男に結が飼われているとしか思えない。あの男が結を手放すとは思えないんだ」

「…やはりお前は心配性だな。職業病か?」

「馬鹿にするな!私は本気だっ!!」

「解っている、そう怒るな。例えお前がそれを言ったとしても、結を困らせるだけだ」

「そ、それは…」

「そして結を変えるとするなら、それは我らの役目ではない」

「っ………」




フッと笑った孫市が私の背後を指を差した。その先に誰がいるのか

それを確認しようとすれば―…







「おいサヤカ!こんな所でなに話して―…って、うぉおっ!!」

「…元親、空気を読め。そしてその名で呼ぶな」

「アンタは顔面狙いで拳を振り抜くなっ!!なんだ?邪魔したか?」

「ああ、」

「邪魔だ」

「・・・・・」




私たちの話を遮るように現れた男。その手には自分で持ってきた酒がある

喫茶店に何を持ち込んでいるんだ、これだから男は…!といつもの台詞が出かかったが、先に察したらしい




「おっと!怒鳴られる前に退散するかっ、と、じゃあ俺はアッチ行くぜ」

「…アイツと何か話すのか?」

「ああ!」




クイッと顎で差した先には荷物を抱えた結。それを受け取り代わりに運ぶ派手な髪の男

そしてそれを寂しそうに眺める、パーカー姿の背中が見えた





20140701.
正義孫市と力直虎

※直虎さんは警官設定

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