女教皇と審判
「な、何ですか!何なんですかあのアダルティな一角は!けしからんですよ!」
「ぐう…毛利先生め羨ましい…!僕もいつか、大人のお姉さんと大人な雰囲気をつくりたい!」
コソコソと覗き見るその先は店のカウンター席
その隅っこでないしょ話をするのは美しいマリアさんと悪名高き毛利先生!
なんだか仲良さげだし、二人でしか話せないことなのだろうか…それにしても怪しい
「ああ、私もあの方と、あんないい雰囲気になりたいですっ」
「なっ…!ま、マリアさんと毛利先生がそんな関係なわけない!僕は認めないぞ!」
「そんなこと言って、この前は結ちゃんみたいな守ってあげたくなる子がいい!て言ってたじゃないですか」
「マリアさんと結さんはまた別々の魅力が…って、いったぁあっ!!?なんで殴られたのっ!!?」
「今、女として鹿之介くんを殴らなきゃいけない気がしました」
僕に躊躇なく拳を振り下ろした鶴姫さんは、確実に孫市さんの悪影響を受けてると思う!
いやいや待って!それなら僕以外も殴って回るのが平等ってものだよ!
「僕の情報によると、この喫茶店に通う男は十中八九、結さんが目当てだっ」
「私知ってます!今のセリフをブーメランって呼ぶんですよねっ」
「…鶴姫さんって僕のこと嫌い?いやいや僕の憧れなんかよりもっと下賤な下心なんだきっと!」
最近、この町にやって来たという左近さんや官兵衛さん。他にも勝家さんの銭湯で見かけた顔や知らない顔が溢れている
僕がこの町で知らない顔はないはずだった。それは日々の調査で自信がある
「確かに…急にお店のお客さんが増えましたもんね」
「人々が集う喫茶店…その輪の中心には可愛い看板娘…突如として行方を眩ませたマスターと、彼女に迫り来る魔の手…!」
「そして颯爽と救い出す神社の君!素敵ですっ」
「……へ?神社の君?」
「あれ、知らないんですか?結ちゃんにはイエヤスくんってボーイフレンドがいるんですよ」
「え、え……ええっ!!?」
あれ?と首を傾げる鶴姫さん、いやいや、え?ボーイフレンド?
「き、聞いてない!そんな話、聞いてないっ!!」
「聞かされてないだけじゃないですか?」
「グサッと僕の心臓に突き刺さったっ!!そ、そんな!結さんは皆の結さんなのに!」
「あ…もしかしてもしかして!今、結ちゃんに話しかけようとしてる人でしょうか?」
「何だってっ!!?そこの貴方!結さんには指一本触れさせ―…」
「コラッ!!!!」
「ぎゃあっ!!?」
「きゃあっ!!?」
僕の頭に再び拳が落ちてきて、隣の鶴姫さんは襟首を掴まれブラブラと揺れる
ハッと振り向いた背後には…般若のような顔をしたお姉さんが立っていた
20140701.
女教皇鶴姫と審判鹿之介
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