運命の輪

  風が吹く


『ほ、ほ本日は!う、運命の輪へ、おこ、おこし、いただ―…!』

「はい、カンパーイッ」

「「「乾杯ッ!!!!」」」

『ひぃっ!!?』

「ほら甘露、乾杯っ」

『か…乾杯っ』




私の挨拶に痺れを切らした京極さんが掛け声をかければ、皆が手に持ったグラスを掲げて声を揃えた

隣のマスターが私にグラスを向けるので、カチンと、互いを軽くぶつける


今日はついに新・運命の輪の開店日。常連さんや新しい仲間を加えてのパーティーだ!







「…ってわけで、新しく先輩と一緒に働くことになった伊達政宗だ。よろしくな」

「おう、結や勝家から話は聞いてるぜ幼馴染みくん!俺は長曾我部元親だ」

「長曾我部さん、ね…先輩を気安く呼んでるがもしも手ぇ出したらオレが…!」

『ま、政宗くん!すみません長曾我部さん、すみません!』

「ははっ、まぁ俺は医者してるからな、調子が悪かったら来いよ。一番苦い薬出してやる」

「う゛…!」

『あ、はは…』




長曾我部さんに喧嘩を売った政宗くんだけど、やっぱり余裕の差か彼に倍返しされた

お店が開店、つまり今日から政宗くんもうちの店員さんになるということで。常連さんへ順番に挨拶をしてるんだ




「勝家からは結の金魚のフンって聞いてるからなぁ幼馴染みくん。なるほど、よく解る」

「なんだとテメェ…!」

『政宗くんダメだってば!』

「先輩は金魚じゃなく人魚だ、そこ間違えんなよ!」

『そこなのっ!!?』

「ハハハッ!久々に会ったがやはりよく解っているじゃないか、政宗」

『マスターっ』

「チッ―……!」




背後にいたマスターが私と政宗くん、両方の肩に腕を回す

それに顔をしかめ盛大に舌打ちをした政宗くんに…私と長曾我部さんは苦笑した


そうだね政宗くん、マスターと仲悪かったもんね




「そんな顔をするな、久々の再会を祝おうじゃないか!」

「HA!生憎、先輩との再会はすませたんでな。アンタと祝すことは何一つねぇよ」

「相変わらずだな朋よ。もう少し予にもなついて欲しいが…うぬが帰ったとなれば甘露も安心だろう、頼むぞ」

「っ―……!」

「ん?どうした?」

「チッ…!四年前とその言葉がなきゃ、アンタなんか…!」

「…………」

『ま、マスター!私たちはもういいですから、京極さんのところへ行ってあげてくださいっ』

「マリアか?」




未だに回されたままな腕をトントンと叩きマスターに促す

彼と久々なのは私たちだけじゃないんです




『京極さん、マスターに会いたがってましたから。挨拶してあげてくださいよ』

「そうか…甘露がそこまで言うならばそうしよう。しかし、しばし後にする」

『え?』

「なんせマリアは今、他の男との話に夢中なようだからね」




そう楽しそうに笑ったマスターの視線の先

そこにはカウンターの隅に座る二人の姿があった






20140629.
開店パーリーが始まる

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