メリーメリークリスマス
「………………」
「…なあ真田、あれはもしかすると三成じゃないか?」
「もしかせずとも石田殿でござる」
「あんな所で何をしているのだろう」
「クリスマスケーキの購入かと。列に並んでおられる」
「クリスマスケーキ…」
部活からの帰り道。今年のクリスマスは佐助や独眼竜と遊ぶという楽しい、それでいて男としては寂しい話を真田としていたところ…駅前で三成を見かけた
真っ直ぐに前を見つめて列に並ぶ三成。その姿はどうしても異様で、思わず真田を引き止めてしまう
「おそらく、雪子殿と兄君のお使いかと」
「な、なるほど…通りで心なしか上機嫌に見えるわけだ」
「うむ!石田殿もクリスマスケーキが楽しみなのだな!某もケーキだけでなく、チキンもオードブルも楽しみでござるっ!!」
「…三成は雪子や秀吉殿のお使いだから嬉しいんだろうな…」
…そして何より、今年の雪子はクリスマスの予定が埋まってるわけか
何となく真田と共に肩を落とし、三成に気付かれないよう行列から離れていった
『あ、お疲れ様三成!そしていらっしゃいクリスマスケーキっ!!』
「お待たせいたしましたっ!!クリスマスケーキです、お納めください雪子様…!」
『うむ、くるしゅうない!』
「…雪子、彼で遊ばないの。そしてありがとう三成くん、冷蔵庫に入れておいてくれるかな」
「はっ!!お任せください半兵衛様っ」
クリスマスの飾り付けも終盤にさしかかった頃、クリスマスケーキを抱えた三成がやって来た
お店にお願いしていたケーキを受け取ってくれた三成。自ら進んでお使いを引き受けてくれた彼は、心なしか血色がいい
「秀吉様と半兵衛様のクリスマスパーティーにお招き頂けただけでなく、雪子様とご一緒できるなどこの三成、恐悦至極で…」
「三成くん、簡潔にまとめなさい」
「幸せですっ!!!」
「うん、分かりやすくてよろしい」
『タケちゃんも三成で遊ばないでよ…兄さんはもう少ししたら帰るって』
「そう、じゃあ僕は車からシャンパンを出してくるね」
『行ってらっしゃーい』
そう言って意気揚々と出て行くタケちゃん。なんだかんだ彼も、クリスマスパーティーが楽しみで仕方ないんだ
そして隣の三成もソワソワが止まらない。うろうろと落ち着きがない彼を、クリスマスツリーまで促した
『この天辺、星を置いてくれる?』
「お任せくださいっ!!」
『でもごめんね三成、今日は家康くんたちとクリスマスパーティーあったんでしょ?』
「…男だけの虚しい集まりです」
『…ごめん、それは否定できないけどなんかごめんね』
「奴らには断りを入れています。それに雪子様からのお誘いが先でした」
『ふぅん…じゃあ男子パーティーのお誘いが先だったら、そっちを優先してた?』
「それは…」
『ふふっ、うん!たぶんそうしてたよね、良かった、先に誘っといて』
三成は義理とかすごく大事にする人だから。例え兄さんやタケちゃんがいるパーティーでも、先の予定を優先するだろう
だからこのパーティーも1ヶ月前から計画していた。彼も含め、一緒に過ごせるように
「雪子様からお誘いを頂いて1ヶ月…今日を思うあまり、夜も眠れませんでした…!」
『うん、それは予想外だったよごめんっ!!寝不足にしちゃってごめんっ!!』
「私の眠りなどっ!!雪子様こそ、せっかくのクリスマス…秀吉様と二人きりで過ごしたいのでは…」
『パーティーなんだから賑やかに楽しむが勝ちだよ!それに私、三成と一緒がよかったもん』
「雪子様…」
「…コホン、そろそろ料理を出そうか二人とも」
「は、はは半兵衛様っ!!?」
『早くも戻ってきたかタケちゃん…相変わらず空気の読めなさがすごいね』
「そりゃ雪子と男を二人きりにできないからね。ほらほら、急がないと吉郎が帰ってきてしまうよ」
「は、はい!」
『はーい』
お高そうなシャンパンを両手に、テキパキと準備を再開するタケちゃん
それに続こうと、側を離れようとした三成の…手を掴んで引き止めた
長い間ケーキの行列に並んでいた三成の手は、まだほんの少し冷たいままだ
「あ、の…雪子様…?」
『しーっ、三成、あれ持ってきてくれた?』
「あ…も、もちろんです!」
『私も私も、兄さんたちが集まる前に…こっそりプレゼント交換ね』
タケちゃんが背中を向けているうちに、私たちが取り出したのは小さな袋に入った…内緒のクリスマスプレゼント
パーティーとは別で、こっそり交換しようと相談していたんだ。高校生な三成に合わせ、千円以内って決まり付きで
『ふふっ、三成が気に入るといいんだけどね』
「わ、私もっ…雪子様に似合うものを見繕いました」
『ほんと?開けるの楽しみにしとくっ』
「はい…!」
「雪子ー、三成くん?」
『はーい、分かってまーす……三成、メリークリスマス』
「…雪子様、メリークリスマス」
互いの手のひらにプレゼントを乗せ、すぐポケットにしまい込んだ
そして急かすタケちゃんの手伝いに向かう。チラッと一瞬だけ視線を交え私はニッと、三成は困ったように、少しだけ笑顔を向けあった
ツリーの天辺に乗る星だけが、私たちの秘密を知っている
20151226.
投票3位:三成(We Copy !!)
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