yume-utsutsu..*

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膝まづいて愛を誓え


『…ッ』
「で、嬢ちゃん。
君の主人は何処に居るんだい?」
『……』
「黙ってちゃ分からねえだろォが!!」
『ッ!!』


バシンッと乾いた音。
歯が揺れる程の痛み。

でもね、あたしは口を割らない。
あたしは何も喋らない。
あたしの声は、誰にも聞かせないの。


「ちっ…呻き声一つあげやしねえ」
『……』


苛立ちが頂点に達したのか、あたしのお腹に男の皮靴の爪先がめり込んだ。
酷い嘔吐感。でも、我慢。
大丈夫、大丈夫。


「…ボス、そいつ、元々声が出ないらしいッスよ」
「あァ?」
「何でも、幼い頃に過度の精神的ショックを受けたらしくて。
以来、そいつの声を聞いた事のある人はいないらしいッス」
「それ、本当なんだろうな?」


苛々している男の声に、はい、と頷いて見せる一人の下っ端。


「ちっ…今週は殺し過ぎたからな…警察も嗅ぎつけるだろうし…
声が出ないなら、俺等の事も言えねえ。
おい、こいつをどっかに捨てとけ」


後ろ手に縛られたままのあたしを突き飛ばし、倒れたあたしを乱暴な腕が捕まえて外へ出された。
ああ、ほら。助かった。

ロープを切られ、荒々しく放り出されて、広い空の下に出られた。
太陽の光を浴びて、あたしの足下に影が出来る。
良かった、生きてる。

あちこち痛いけれど…
あたしには帰るべき場所がある。

ふらつく足取りで、あたしはあの人の元へと向かう。
背後には細心の注意を払って。

少しでも尾けられていたら、今日は帰るのはよそう。


わざと遠回りしながら歩いて、二時間近く関係無い場所をうろうろしてみたけれど、誰もあたしの後を尾けて来ていない。
ホッと胸を撫で下ろしたけれど、それでも油断はせずに進路を変えた。


帰るべき場所へ―…




『―…只今戻りました』
「やァ、お帰り。
遅かったね、名前」
『野狗に纏わり付かれていただけです、愛的人』


見上げる先には、あたしの主人で、ボスで、尊敬する人物。
そして何よりも、愛する人。

中国貿易会社「崑崙」英国支店長…基、上海マフィア青幇幹部、劉。
そしてあたしは、幼い頃に両親を目の前で殺され、声を失くした哀れな少女を演じる劉の部下、名前。


「…あれぇ?
名前、その傷は―…」
『野狗に噛まれただけですよ、愛的人』
「……」


劉の手を逃れ、あたしは部屋に戻った。


「名前、怪我してる」
『藍猫…』


部屋には何故か藍猫が居て、あたしの頬や腕を指差してそう言う。


『野狗に噛まれたの』


そうは言うものの、"鼻の利く"藍猫は


「嘘吐き」


と、簡単に見破られてしまった。


『…藍猫、この事、劉には内緒ね。
心配、させたくないでしょう』


ね?と頼めば、小さく頷いた。
それを確認して、あたしは藍猫を部屋の外に出して汚れた洋服を脱ぎ捨てた。


「―…噛まれて痣なんて出来るのかい、名前?」
『―…ッ』


背後から聞こえた声に、ビクンッと肩を震わせた。
振り返れば、其処に居るのは珍しく黒い瞳を覗かせた…


『ら…劉…』
「嘘は、良くないよね。
分かっているかい、名前」


耳を掠める、劉の唇。唇は傷に触れ、掠め、また傷へと移って行く。
唇はそのまま首筋へと降りて行き、わざと吐息を掛ける様に囁いた。


「君を傷付けた野狗は、何処の野狗なんだい?」


ああ、怒っている。
どうしよう…

首筋を生温かい物が滑る。


『ッふ…ぁ』


ゾクゾクと背筋を何かが駆ける。


『ッい゙…!』


次にやってきたのは、激痛。
生温かい、紅い雫が首筋を伝う。


「名前は血の色が良く似合うね。
でもね、名前を血色に染めて良いのは我だけなんだよ」


低い声が、首筋で震える。
痛みが快感に変わっていく。


『ッあ!』
「どうしてこんなに濡れているんだい?」
『や、やだ…劉…ッ』


劉の白い指が、あたしの蜜口をくすぐる。
浅く、指を抜き差しするけれどそれでは足りない。


「嫌だっていう割には、どんどん濡れて来るね。
ちゃんとして欲しいなら、腰を動かして御覧?」


辱める言葉すら、快感の材料。
羞恥心を押しやって、腰を動かした。


「ああ、良い動きをするね。
我の指を美味しそうに咥えて」
『ッ…ハァ…ッぁ』


一本じゃ足りまない
こんなんじゃ、足りないの。


『ッあ…ちゃ…と…』
「ん?何だい?」
『ッちゃん…と、触ってぇ』


涙目で懇願すれば、薄い唇を妖艶に歪めた。


「我は壊してしまうかもしれないよ?」


ああ、もどかしい。
この状況を早く打破したいの。

お願い。


『ッ壊しても良いからぁ』


それでも劉は挿れてくれない。


「ダメだよ。
嘘吐きには、あげられない」


なんて、意地悪。


「さァ、野狗は何処の仔?」
『…ッ』


幾度も拷問に耐えて来た。
その拷問の内、一度もあたしの口を割った者はいない。
それは劉への忠誠心と、愛。

でも、それが忠誠を向ける者からの拷問だったら。
愛の有る拷問だったら。

あたしは、口を割ってしまう。


「さァ、我に教えてくれないかい?
可愛い我の愛的人…」


クチュ…と、劉の指がゆっくりと抜かれて行く。
折角奥にまで入れたのに。

お願い、お願い。
抜かないで…
ダメ、嫌、足りない。

思わず下腹部に力を入れてしまう。


「おや?抜けなくなってしまったね。
どうしたんだい、名前?
指だけで我慢できるの?」


悪魔の囁き、とは正にこの事。
悔しいけれど、愛する人の囁きと、愛する人からの快感には、勝てそうにも無い。


「素直で正直な名前が、我は一番好きだよ」


ほら、と促され、あたしはゆっくりと唇を動かした。


『ッ東洋人街の…イタリアマフィアの人…ッ』


そう言った瞬間


「お利口さん」
『ッん゙ふ…ぁああぁ!!』


背後から突き立てられたその質量と熱。
それに耐えるように、あたしは目の前の棚に両手を付いた。
劉があたしのモノだと思える、その瞬間。
劉があたしに自身を刻みつける感覚。

今は、躯の痛みなんて全て忘れて、この快感に溺れて死んでしまいたい…


「名前のなか、凄い濡れてる。
我のに吸い付いて、離さないみたいだ…ッ」
『ぁ…ッ劉の…大きッ…よぉ』
「そうかい?
我は比べた事が…ッ無いから、分からない…ッ
名前が喜んでくれるなら、我はそれで良いけどね…ッ」


内壁を巻き込み、溢れて止まない蜜が劉の律動を滑らかにしている。
下腹部が疼いて、蜜が溢れ出し、太腿を伝う。


『ん、ぁ!』


劉の右手の指が、あたしの胸の飾りを捻り上げた。
左手の指は、あたしの小さな蕾を優しく触る。
時々押し潰すように、そして時々円を描く様にくるくると撫でたり。
爪の先で引っ掻いたり、優しく撫でたり。
でも、右指は容赦なく胸の飾りを捻る。

痛イ、気持チ良イ
イタイ、キモチイイ


白い光が、頭の中で幾つも弾けた。


『―ッ…も、イッ…』


ガクガクと足が震えて、声にすらならずに快感が体中を駆け巡る。


「ッそんなに締めたら…我も、イッ…」


劉が小さく呻いて、あたしの最奥を突き上げた。
白濁とした欲望が放たれて、その熱を感じながらあたしも果てた。


「く…ッ」
『ッあん…』


ズリュッと卑猥な音を引き連れて、劉がソレを引き抜いた。
ドロッとした液体が、内腿を垂れて行く。
怪我の痛みが、今更やってきた。
痛みと、情事後の独特の倦怠感に襲われて、あたしはそのまま瞼を閉じた。



「―…さァ、藍猫。
行くよ」


扉を開ければ、既に武器を構えている藍猫の姿。


「名前を傷付けた奴、許さない」


強気な猫みたいな瞳。
小柄でスタイルも抜群なその容姿からは全く想像も出来ない、腕力と身体能力。

シマを荒らした奴にお灸を据える為に、飼っている猫だけれど。


「我も、許せないよ」


愛する人を傷付けた罪は、比較できない程重い。


「行こうか、藍猫」


眠れる愛する女(ヒト)は、何も知らずに夢を見れば良い。
君は、何も知らなくて良い。
君は、何も考えなくて良い。


唯、我の傍で微笑っていて。







膝まづいて愛を誓え
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我は忠誠なんか要らない


(藍猫が妹だったら良いのになぁ)

11.08.11.22:20

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