yume-utsutsu..*

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世界が素直で出来ていたら。


『ん…劉…?』


朝日なんて差し込まない部屋で、あたしは何時も目を覚ます。

けれど、隣には何時も愛しい人が居る。
寂しくなんか、なかった。

しかし、今日は隣に劉が居ない。
寝ぼけた頭で一生懸命探してみるけれど、部屋の何処にも、その姿は無かった。


( …何処行ったんだろう… )


急に底知れない不安と恐怖が襲い掛かる。

昨日、劉は何か言っていただろうか。
ぼーっとしていた頭は覚醒し、昨日の記憶が鮮明になっていく。


『―…ッあたし…』


頭が割れるように痛みだした。
それにつられたように、体中が軋み、痛む。


『―…ッ』


何時もと同じ匂い。
何時もと同じ暗さ。
何時もと同じ位置。


そして気付いた。


此処が何時もの部屋ではない、と…


『…ッ劉…劉、劉…!』


怖い、怖い、怖い。
怖い分だけ名前を呼んだら、貴方は来てくれる?

そんな途方もない事を考えながら、あたしは必死に名前を呼んだ。

その時


―バァンッ


扉が開いた。

一気に差し込む明かりに、目が眩む。
目を細めてその光の向こうを見つめるけれど、そこに立っていたのはあたしの望む人ではなかった。


「よォ、お嬢さん。
気分はどうだい?」


その声に、鳥肌が立つ。


『…ッ昨日の…』
「良く覚えてるじゃねぇか」


ニヤリ、と口角を上げたその姿、あたし…昨日この男に攫われたんだ…




「よォ、お嬢さん。
何処行くんだい?」


背後から聞こえた声に振り向けば、暗闇に佇む一人の男。
街灯の無い暗い路地で顔まで確認出来なかったが、本能が告げた。



"逃げろ"



と。
駆け出そうと回れ右をしたけれど、そこには待ち構えていた数人の男。

何本もの腕が伸びてきて、あたしを捕らえた。


『い、や!!
離して―…きゃあッ』


暴れようともがけば、男に服を引き裂かれた。
白い肌が、劉にしか見せたことのない肌が露になる。


『や…やめ…』


涙目で訴えても、男達は至極楽しそうに笑い、あたしの服を切り裂いていく。
肌の面積はどんどん広がり、服の面積はどんどん小さくなっていく。


一人が待ちきれないと言わんばかりに、濡れてもいない固く閉じた蜜口に大きく反ったソレを突き立てた。


『い、いやああぁあ……ッ』


激痛と屈辱。
その後の記憶はない。





「思い出してくれたみてぇだな?
まァ、じゃなけりゃこんな小細工しねえけどよ」
『…どういう意味…?』
「女王の番犬だか何だか知らねぇけど、この国にはドラッグの豊潤な薫りがしねえ」


舌打ち混じりにそう呟く様に落とす。


「劉の野郎も、女王の番犬に媚びてるんのか、この辺一帯を管轄していやがるから、俺等も商売あがったりなんだよ」


ダラダラと長い説明を終え、分かったか?と問い掛けられる。
そんなの、劉の所為じゃない。
そう言ってやろうと思ったけれど、男が近付いて来て思い切りあたしの頬を殴った。
その所為で唇が切れた。
じんわりと鉄の味が広がる。




「だが劉の所在はさっぱり分からない。
でも俺は耳にしちまったわけよ…
劉をおびき寄せられる、最高の餌があるってな…」


顎を掴まれ、無理矢理上を向かされる。
触れられるだけで、ぞわぞわと肌が粟立つ。


「アジア人で、一見普通の女の子…
お前だろう、名前ってのは」


下品な顔立ちが、あたしを見下ろす。
濁った汚い瞳には、傷だらけのあたし。


「もう一人、劉が常に傍らに置いている女か悩んだんだけどよォ…
東洋人街の奴等がその猫に引っ掻かれたらしいからな。
消去法でお前に行きつく訳だ」
『ッ…こんな事しても、劉は来ない!』


男を睨みつければ、怪訝そうな表情であたしを見下ろす。


「来ないなら来ないで、お前をボロボロにしてから突き返すまで」


厭らしく笑い、あたしの顎を離した。
バランスを崩し、あたしは再びベッドに体を沈めた。


「殺さずに一本一本指を切り落として、毎日劉に贈りつけるのも良いなァ」


小さなナイフを取り出し、あたしの指に宛がう。


『ッ…』


人差し指の付け根を軽く切られ、鮮血が流れ出る。


「あいつはどんな顔するんだろうなァ?」
「こんな顔じゃない?」
『!!』


あたしの血が付いたナイフをベロリ、と舐めた時だった。
男の背後から聞こえた声…

男は驚いて振り向く。


「こんなトコに居たの、名前」
『あ、ら…う…』
「おやおや、傷だけだねぇ。
誰に噛まれたの」


薄らと開いた、劉の瞳。
普段の穏やかな声とは違い、もっと低く重い。


「て、てめえ…
どうやって中に…ッ」
「どうやって?
ヤダなぁ。我達はちゃんと正面から入って来たよ?」
「な…ッ」
『…ッな、んで…来たの?』
「何で?名前も随分可笑しな事を聞くんだねえ。
我は大切なモノを取り返しに来ただけだよ」



良く見れば、劉の向こう側は屍累々、と言った感じで。
開け放ったままの扉の向こうでは、藍猫が何時もの様に無表情で武器を振り回している。
そんなあたしのこめかみに、男が銃口を向けた―…


「ッはは…
う、動くな。
動いたらコイツが―…」
「こいつって、誰?」
「ッ!!」


銃口を向けられた、その時あたしは確かに男の背中を見ていた。
でも、今あたしは男を正面から見ている。
男に銃口をこめかみに当てられた刹那、劉があたしの視界から消えて、気が付いたらこうなっていた。


「う、うわあぁあぁああ!!」
「おやおや、お転婆さんだねぇ」


男は半狂乱で銃を乱射する。
劉はあたしをお姫様抱っこしたまま、まるで弾が見えているかの様に、回ったりステップを踏んだり、踊る様に銃弾を避ける。


『ら…劉、あたし邪魔なら―…』
「邪魔?
そんな訳ないよ。
実際こうして避けられてる訳だしね」


語尾に星マークが付くような、何時もの口調。
あたしは震える手で劉の服を掴むだけで精一杯だった。
暫らくして、カチッと引き金を引く音だけが聞こえた。
劉も動くのを辞めた。
どうやら、弾切れらしい。


「じゃあ、此処からは我達の番だね。
おーい、藍猫ー」


劉がそう呼べば、藍猫が部屋に入って来る。


―ズン…ッ


武器を置けば、床にヒビが入る。
とても振り回せるほどの重さでは無い事が、一目瞭然だ。

劉が片手を挙げた。
招き猫のように拳を作り、軽くスナップをきかせて。


「ニャオ!」


と言えば、それが合図のように藍猫が武器を振り上げる。
耳を塞ぎたくなるような音に、ぎゅっと目を閉じた。


じゃあ、帰ろうかという劉の言葉を合図に、あたしは何故か劉に抱えられたまま帰路を辿った。



「名前、無事で良かった」
「そうだねぇ」


無事に窟へと戻り、ソファーに座らされたあたしの隣に藍猫が座り、ぴったりとくっついてくる。
藍猫とは反対側に劉が座り、あたしの肩に手を回す。
その手がゆっくりと肩をなぞり、首筋に辿り着いた。

…どうしよう…
劉、怒ってる。


飄々とした態度、崩さない笑み、普段と変わらない口調。
でも、この仕種が語っている。
劉の心境。

藍猫が立ち上がった。


「おや、何処に行くんだい、藍猫」


劉がそう問い掛けるが、藍猫は黙って出て行ってしまった。
小妹の藍猫。
仕種なんか見なくても、劉の雰囲気や感覚で読み取ったのだろう。

二人きりになってしまったこの空間で、逃げるという行為はかえって劉を刺激してしまう。
大人しく座っていると、視界が回った。
天井を見上げ、その手前には薄らと眼を開けた劉が居る。


『ら、劉―…』
「どうして我が怒っているか、分かっているよね?」


ソファーという狭い場所に押し倒され、逃げ場はしっかりと劉に封じられている。


『い、いいえ』
「ふぅん?
じゃあ、お仕置きだね」




劉は言い終わると同時にあたしの唇に唇を重ねた。
舌が唇を割って歯列をなぞり、歯という壁すらも無理矢理割ってあたしの舌を絡め取る。


『ふ、ん…』


二人の混じり合った唾液が、顎を伝う。


「あーあ。
零しちゃダメじゃないか」
『ッぁ、ごめ…』


劉が人差し指で唾液を掬い、あたしの唇に塗りつける。
指先が唇を割り、口の中に入って来る。
あたしは一生懸命指に舌を這わせる。


「美味しいかい?」
『ん、おいし…ッハァ』


指を抜かれ、自由になった口でそう言うと、口角を上げる劉。


「では、指よりももっと美味しいものをあげるよ」


そう言って劉はあたしを起こし、自分が仰向けに寝転んだ。
軽く勃ち上がったソレを取り出し、指差す。


「欲しいでしょ?」


あたしは潤む瞳でソレを見つめる。
自分でも分かる。
下腹部が痛い程疼いている事。


『欲しい…です』
「じゃあ大きくしないとね」


妖艶に微笑む劉のソレに手を添える。
ゆっくりと唇を近付け、軽く口付ける。
それを三、四回し、くびれの部分まで咥え込むと、劉の大きな手があたしの後頭部を包み込んだ。
そしてそのまま、後頭部を押された。
劉のソレが一気に奥まで来る。


『んぐッ…ぐ、ゔ』


咳き込みたいのを我慢し、歯を立てないように必死に口を開ける。


「美味しいかい?」


その言葉に返す余裕等ないあたしは、小さく頷く。


「ならもっと欲しいだろう?」


今度は返事をする間もなく、劉が後頭部を抑えたまま腰を動かす。
劉のソレの先端が喉に当たる。
苦しい、息も出来ない。

も、ダメ…

意識も飛びかけた頃、やっと口からソレが引き抜かれた。


『ッゲホ!ぅ゙ぇ、ゴホッ』
「おや、ごめんね、名前。
あまりにも美味しそうに咥えているモノだから、もっと欲しいのかと思ったよ」


激しく咽るあたしに悪びれた様子もなく謝る。
涎と涙でぐちゃぐちゃになったあたしの頬に手を添え、眉尻を下げる劉。


『ゲホッハァ…ハァ…
ッああ!』


劉は上体を起こすと、まだ息が整っていないあたしにソレを突き立てた。


「お世辞にも口の中は気持ち良いとは言えないんだよねぇ。
ねえ、名前。こっちの口では我を気持ち良くしてくれるかい?」


まともに愛撫してもらっていない其処はあまり潤っていないにも関わらず、強引に腰を推し進めて来る劉。
引き裂かれるような痛みと、熱。
どんどん質量を増していくソレが、乾いた肉壁を巻き込んで行く。


『あ、ああ゙ッ』
「んー…
こっちもあまり具合が良くないねえ」


そう言いながらも、劉は律動を止めない。


「そろそろ我が怒っている理由、分かった?」
『う、あ!
いた…ッああ゙』


応えられる余裕など、皆無。
痛みと熱。
それに耐える事が精一杯で、必死にソファーの布を握り締める。


『ッきゃあ!あぁ…』
「応えない名前が悪いんだよ」


今までゆるゆると動いていた劉に、ガンッと一気に奥まで突き上げられて思わず叫ぶ。


「中々濡れないねぇ…
ああ、そうだ。
この前伯爵に良い蜂蜜を貰ったんだよ」


ズリュッと劉がソレを抜き、ソファーから離れた。
何故今蜂蜜?と疑問が脳裏を過る。

しかしその疑問に答えを出す前に、あった、と目的の品を持って劉がソファーに戻って来た。


「蜂蜜は蜂蜜でも、唯の蜂蜜じゃない」


なぞなぞのように呟きながら、蜂蜜の瓶の蓋を開ける。


「甘く苦い香りは、人を誘い、惑わせ、そして狂わせる…」

『ッあ…っつ…』


トロリ、とお腹に蜂蜜を垂らされる。
冷たいのを覚悟していたのに、お腹を伝う蜂蜜は熱い。

劉は瓶の中に手を入れ、人差し指と中指に蜜を絡めさせ


「さぁ、我の可愛い猫。
狂ってごらん?」
『やぁあああ!』


ジュプッと二本一気に秘部に突き立てられた。
蜂蜜のお陰で痛みは無かったが、尋常じゃない熱が襲う。
内側から焼けて行く様な、溶けてしまいそうな熱。


「おやおや、随分と気持ち良さそうだねえ」
『あ、も、らめぇ!
ハァ…熱…いのぉ』


ビクビクと躯が跳ねる。
快感を通り越して、衝撃にも似た感覚があたしを支配する。

頭の芯すらも、溶けてしまいそう。
熱い、熱い。
下腹部が疼く。

何、これ…


「気持ち良いだろう。
何て言ったってこれは、英国の裏社会で最も強力と言われている"媚薬"なんだからね」


今日は知ったかぶらないのね、なんて何時もなら言えるのに。
声も出ない。
もう、何も考えられない。


『あ、ぁ…ン、あッ
ハァ…ゔ…ッああ』
「…壊れちゃったのかい?」


小さく呟く声が随分遠くに聞こえる。
何時もの劉の声じゃない。
真剣な…低い声。

溶けかけた頭を起こして、瞳を少しだけ開ければ、普段見せない劉の黒い瞳が長い睫毛の向こうに見える。


「我も、そろそろ気持ち良くなりたいんだよね」
『ぇ…あ!
はぁああんッ』


ズッと再び劉のソレが挿れられた。
先程よりも質量の増したソレが、容赦なく肉壁を抉る。


『や、熱…ッ
もぉ、あ…!!
こ、われ…る…ッッ』


蜂蜜が潤滑油の役割を果たし、律動がスムーズになった事によって劉が腰を打ち付けるスピードも上がる。


「ハァ…やっぱり名前のナカは気持ち良いよ」


余裕の無い声が聞こえた。
ソファーの布を握り、快感と熱に耐える。






『ハァ…ッぅ、あ!
ああぁあッ…やあ、あん!!』


本当に、我の猫は可愛らしい。
我が与える快感、一つ一つに従順に反応を示す。


「ッく…名前、我が怒っている理由はね…」




『ッ…こんな事しても、劉は来ない!』

『…ッな、んで…来たの?』

『ら…劉、あたし邪魔なら―…』




名前の素直じゃないトコが原因なんだよ。
名前は分かっていない。
我がどんなに君を愛しているか、大切に思っているか。


名前が傷ついたのなら、我は傷付けたヤツを地の果てまで追いかけるよ。

名前が泣くのなら、名前が怖がるなら、我は君を抱き締めに行くよ。

名前を助ける為なら、護る為なら、傷の一つや二つ惜しくはないよ。


だから、どんな時でも我の傍に居て欲しい。
我がそれ程にまで名前を想っているのに。
気付いてくれない君に我は何時も、どんな思いで居るか知っているかい?
知らないだろう。
だからこうして、時々君を傷付ける。
我の気持ちに、愛に、涙に。
気付いて。

我は名前しか見ていないのだから。


「―ッ…愛してるよ、名前」
『はあッああ、んぁあ゙!!』


最奥を突き、欲望を吐き出す。
名前は背中を反らせて大きく痙攣して果てた。

ぐったりとする名前から自身を抜き、身を清める。
名前の躯も拭いてやり、服を着させてそのまま寝かせておいた。

我は媚薬の所為か、まだ少し火照る躯を醒ましに外に出た。


「―…おや、藍猫。
どうしたんだい?」


外に出れば、相変わらず無表情の藍猫が立っていた。


「気持ち、伝わった?」


藍猫らしからぬその言葉に、少し苦笑しながらも小さく頷いた。


「…まぁ、それは彼女にしか分からない事だけどねぇ」


口数は少ないけれど、誰よりも素直な藍猫。
この娘みたいに名前ももう少し素直になれたら、我の気持ちに気付けるのにね。




世界が素直で出来ていたら。
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我は君を助けるよ、何故なら君を愛しすぎたから。


(素直になるって難しいと思います)

11.08.19.16:36


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