![]() ![]() yume-utsutsu..* ◎name change nrt | btl | main 100%ビター 49/49 100%ビター 私が一体、どんな気持ちで貴方を見つめているか、なんて。 貴方は知らないだろうし、知る由もない。 「みょうじ三席、この書類頼めるかい?」 『吉良副隊長…』 憂いを帯びた口元、弱々しげな笑顔。 頼りなさそうに見えるけれど、意志の強い瞳。 酷く整った顔立ちは、前髪で半分隠れているけれど、風で靡いたときとか、ふとした時にその表情が見えると胸が高鳴る。 一瞬にして周りの音が消え去るの。 私は吉良副隊長の持っていた書類をしっかりと受け取ると、承ります、と一言呟いてすぐさま視線を逸らした。 吉良副隊長は頼むよとだけ言って、自席に着いた。 筆を走らせる音と、開けた窓から聞こえる鳥のさえずり、時折執務室を吹き抜ける風の音。 私たちの空間はたったそれだけで構成されていた。 私の鼓動の音がやたらと大きくて、気付かれないように下唇を噛みしめながら必死に筆を走らせる。 「みょうじ三席が真面目で助かるよ」 『ぇ…』 吉良副隊長の優しくも低い声が鼓膜を揺らした。 書類から顔を上げれば、自席に座り、書類と向き合ったままの吉良副隊長。 何も反応しなのは、失礼かと思って戸惑っていると、不意に吉良副隊長が顔を上げた。 「うちの隊長が隊長だからね」 吉良副隊長は、またサボって空席になっている市丸隊長の席を見て、そこから私へと視線をずらした。 クス、と唇の端から漏れる吐息。 目尻が下がり、薄い唇が弧を描く。 優しい笑顔に、私の体温が急上昇するのが嫌でも分かる。 私は慌てて視線を逸らした。 「みょうじ三席が手伝ってくれるから、僕は凄く助かっているんだ」 『…恐縮です』 心臓が喉にあるみたいに苦しい。 私はその一言を絞り出すのがやっとだった。 「時に聞きたいんだけど」 『はい』 私は副隊長に視線を戻さないまま、相槌を打つ。 「みょうじ三席は僕の事が嫌いなのかな」 『え…』 予想もしていなかった質問に、思わず視線を副隊長に戻す。 「ふふ…やっとこっちを見たね」 少し意地悪な笑顔に、私は耳まで赤くなるのを感じた。 「その反応、君は僕のことを嫌いじゃないと取って良いのかな?」 『あ、えと…その…』 お腹が痛い… 正確に言えば、心臓があまりにも大きく鼓動するものだから、息苦しいだけなんだけど。 緊張しすぎて、じっとしていられない感じ。 私はどう返して良いか分からずにまた視線を逸らした。 「…この場面で視線を逸らされると、胃が痛くなるね…」 胃のあたりを押さえながら、何時もよりも弱々しい頬笑みを浮かべる吉良副隊長。 私はさっきの質問がぐるぐると脳内を駆け巡るものだから、吉良副隊長を直視出来ずにいた。 ―カタン… 吉良副隊長が動いた気配と音。 きっと給湯室にでも行ったのだろう、と思い、私はほっと溜息を吐いた。 「そんなに僕が好きなのかい?」 『!?』 ハッと顔を上げれば、不敵に笑う吉良副隊長の姿がすぐ目の前にあった。 副隊長の細く長い指が私の髪の毛を一束絡める。 「気付いていないとでも思っていたのかな」 残念ながら、僕はそんなに鈍くない。 そう囁いた声があまりにも甘いものだったから、全身麻痺したみたいに動かなくなった。 吉良副隊長は指に絡めた私の髪に唇を押しあてると、妖艶に笑った。 「僕の気持ちにも、気付いてほしいな」 耳元で吐息混じりに聞こえた声に、一瞬全身の血の流れが止まった気がした。 次の瞬間、止まっていた血が一気に逆流して、もう何も考えられなくなった。 全身茹でダコのようになっている私を見て、至極楽しそうに笑う副隊長。 知らなかった一面に、また少し胸が高鳴った。 100%ビター -------------------- (前髪でこんな一面隠してらしたんですね)(君が僕を見ないから気付かなかっただけだよ) (意地悪なイヅルが好き過ぎる) 12.08.24.12:56 [TOP] [ top ] |