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笑わなくなった恋人
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笑わなくなった恋人


門をくぐれば、幾つものお帰りなさいませ、の声が重なる。
此処朽木邸には数えきれないほどの使用人が居る。
これだけ使用人が居ても、その誰も知らない。

私だけの玩具の存在に。


「今、戻った」


そう話しかけながら開いたのは、襖。
部屋のではない。
私の寝室の、"押し入れの襖"だ。

其処には、かつて愛くるしい程の笑顔を振りまいていた私の愛する人。
今は、笑わなくなった私の妻。

しかし、私はそれを望んでいたのだ。


「戻った、と言っている」
『……』


反応を全く示さないが、それも仕方ない。
彼女は壊れてしまっているのだから。

勿論、壊したのは私。
望んで壊した玩具程、魅力的なモノは無い。





彼女、みょうじなまえは中流貴族の内の一門、みょうじ家の息女。
なまえは二年前、私の元へ嫁いできた。
優秀な弟が居て、なまえと弟は二人共死神だった。
なまえは私との結婚を機に、死神を辞めて朽木家の妻として恥じぬ生き方を常にしてきた。

なまえを初めて見たのは、藍染の傍らに佇む姿だった。
五番隊の三席だったらしい。
藍染にべったりの副隊長とは違い、何処か一線を引いている様な雰囲気。
しかし、自然な笑みは誰をも魅了した。

そう、この私さえも。

彼女が中流貴族のなまえだと知り、私は婚約者として彼女を手に入れた。

―…なまえは、笑顔が素敵だった。
その笑顔を誰にも見せたく無くて、私は彼女に死神を辞めて貰った。

それでも彼女の笑顔に惹かれる者は、後を絶たなかった。



ならばいっそ

彼女自身を壊してしまえ。



と、私の心の中の鬼が囁いた。




『あ、白哉様。
お帰りなさいませ。
何故窓から―…ッな、何を!』


何時も通りの笑顔で私を迎えるなまえ。
その首筋に、注射器を突き立てた。
技局の者に作らせた、意識を混濁させる薬。


『―…ッッ』


意識を失い、倒れるなまえを受け止め、横抱きにして瞬歩を使った。
この薬は、仮死状態にさせる事が出来る。
…随分昔、ウィリアム・シェークスピアが書いた『ロミオとジュリエット』という物語に出て来る毒薬、と言えば分かるだろうか。
時間が経てば、目が覚める。
しかし、薬が利いている時間は呼吸も心臓も止まる。

冷たくなり始めた彼女を、流魂街へと連れて行く。
今日は、なまえが流魂街へと出かける予定だったのだ。

私の描く物語が、幕を上げ始めた…

なまえを流魂街の林の中へ横たわらせ、私はまた瞬歩で家まで戻った。


「今、戻った」
「お帰りなさいませ、白哉様」


何人かの使用人達が私を出迎える。
何時もならば、其処になまえの姿がある。
…今日は居ない。


「…なまえはどうした」
「そういえば、お見かけしませんね…」
「…誰か見て参れ」


そう指示をすれば、さっと動き出す使用人。
口許の笑みを押し隠しながら、私は書斎へと向かう。


「失礼致します、白哉様」
「…なまえは居たのか」
「…そ、それが…」


書斎で書類を仕上げていた私の元に、なまえの様子を見に行った使用人達が戻って来た。
使用人達の話によれば、なまえは朽木邸の何処にも居らず、今朝方『流魂街へ行く』という伝達を聞いた者が居る、という事だった。

私はそれを聞いて直ぐ様行動に移った。
大切な妻が姿を消し、行き先は流魂街だと分かった。
妻を捜索しに行く、愛妻家、と言ったところか。

そんな私の企みと演技にすっかり騙された使用人達が私を褒めたり尊敬する声が背後から聞こえた。
これこそが、私の立てた筋道。

今のところ、歯車は狂っていない。


そして私は林に入り、なまえを抱き上げると、人目に付かぬ様に回り道をしながらゆっくりと家へと戻った。
屋敷の者はなまえの死を確認し、葬儀が行われ、なまえの偽物の死は皆にとって本物に変わった。


啜り泣く声
憐れむ声
私を励ます声


ああ、これで。
なまえは私だけのモノ。


そして翌日。
なまえを私の寝室に連れて行き、口を塞いで身体を拘束した状態で押し入れに寝かせた。
私の寝室には滅多に誰も入らない。
ましてや、私が居ない時に入る者など、誰ひとりとして居ない。
なまえが目を覚ました時、誰かが居合わせる、なんて事は有り得ない。


「白哉様ッ
なまえ様の御遺体が…」
「…霊子になったのだろう…
その痕跡が、微かに残っている」


哀しげに呟けば、しまった、という表情を浮かべる。
申し訳御座いません、と呟いて使用人は去った。

こうして、なまえの死は出来上がった。
いとも簡単に。


「あ、隊長ッ
お疲れ様でした!」
「ああ」


相変わらず声と態度だけはデカイ恋次が、私が帰ると分かり、頭を下げる。
瞬歩で家まで帰り、使用人達と幾つか言葉を交わして寝室に向かった。
ゆっくりと、押し入れの襖を開ける。


『ッ…』


ゴロン、と転がって来たのは、拘束も猿ぐつわもそのままのなまえの姿。
その瞳には、涙が溢れんばかりに溜まって。
私を捕えたその瞳は、安堵を映しだす。

…瞳に映る私は、歪んでしまっているのに。


猿ぐつわを外してやれば、震える呼吸が私の鼓膜を揺らす。


『…び…白哉…様…!』


怖かった、と泣き付くなまえを腕の中に収めて落ち着くまで抱き締めてやった。
そしてなまえが落ち着いた頃、私はこれまでの経緯を話した。


『……白哉様…それは、本当…ですか?』


目を見開いて、驚きを隠せないなまえ。


「ああ、本当だ。
お前はもう、霊子となって消えた存在なのだ。
…皆にとっては、な」


そんな、と今度は絶望に泣き崩れた。


『ッ今から、生きてました…って…』
「ならぬ」
『ッ何故―…』
「お前の笑顔は、私だけのモノだ」


そう言って、私はなまえの唇を奪った。


『んんッ…ふ』


苦しそうに顔を顰めるなまえ。
なまえの小さな後頭部を片手で支え、唇を、舌を、堪能する。
舌を絡ませて、唇を甘く噛んで。

翻弄されて顔を赤らめるなまえの着物を脱がせ、白い胸の膨らみを柔らかく揉む。


『ッあ…や、やだぁ』


首を横に振りながら、私を押し退け様とするなまえ。
そんな抵抗を無視して、私は首筋へと顔を埋める。
なまえの華の様な香りと、僅かな押し入れの檜の香り。
首筋に舌を這わせれば、なまえの吐息も乱れ、白い頬は紅潮し始める。


『ぅ…やぁ…ッん』


舌は段々と降りて行き、ピンク色の飾りに辿り着く。
口の中に含み、舌先で押し潰したり転がしたり…
なまえの声を聞きながら、快感を与えて行く。

もう、私以外の事を考えなくても済む様に。
私だけを見て
私だけを感じ
私だけを想えば良い。

なまえをゆっくりと布団の上に押し倒し、着物を全て剥ぎ取って行く。
帯を解き、足袋を脱がせ、絹一枚纏わぬ姿にして。


『恥ずかし…ッ』
「何を言う。
なまえの躯は、もう何度も見ている」


クス、と笑いを含めば、悔しそうに顔を歪める。
その表情すらも愛おしい。


「それに…」


そう言って指先でなまえの花弁をなぞる。


『ひゃあ…ッ』
「此処は解れきっている」


花弁を開き、その奥の蜜口に指の第一関節分だけを埋める。


『ッ…』


よもやこれ以上赤くする部位は無い、と言っても過言ではない程なまえは顔を赤く染める。


「ほら、聞こえるであろう。
なまえが溢れさせている蜜の音が」


なまえにわざと聞かせる様に少し大袈裟に指を動かしてやる。
二人きりの部屋に、グチュグチュと卑猥な水音が響く。


『や…ッ…恥ずかしいからぁ…』
「恥じらうそなたも美しい」


指を二本に増やし、全てを埋め込む。


『あ…ぅッ』


急に増えた質量に圧迫感を感じたのか、目をきつく閉じて下腹部に力を入れる。
私の指をきゅうっと締め付け、快感を欲する。


「…そんなにきつく締め付けて、どうしたのだ?
私の指を美味しそうに咥え込んで…」
『…ッ///』


言葉に辱められても、それすらも快感として受け止めるなまえは、更に蜜を溢れさせる。


「貪欲な顔をしているな。
そろそろ、欲しくなってきたのではないか?」


そう尋ねれば、膝と膝を擦り合わせて視線を逸らす。
私はおもむろに自身を取り出して、なまえに向けた。

なまえは黙って上体を起こして、私のソレにそっと舌を這わせる。
くびれの部分を咥え込み、鈴口を舌で刺激して。
私が躾けた通りに奉仕する。
快感に質量を増していくソレを、なまえの口から引き抜いた。


『んッ…びゃく…さまァ…?』


トロン、とした瞳で見上げられては、意地悪をしている余裕は無くなる。
私はなまえを布団の上に押し倒し、天を仰ぐ程そそり立ったソレを一気に突き立てた。


『ああぁあン!!…ハァ…あ、おっき…ィ』


足を震わせ、必死にシーツにしがみ付くなまえを組敷いたまま、私は夢中で腰を振った。

ズチュッ…ッパンパン

卑猥な音となまえの艶のある喘ぎ声に酔い痴れ、なまえに自身を刻みつける。


『ぅやあぁ…ッんく…ひゃ…ああぁッ』
「なまえは此処が好きだったな…」
『んぁ!?…そ、こ…ッだめえぇえ』


なまえの良いトコロだけを責め立てれば、生理的に涙を流す。
白い頬は紅色に染まり、其処を幾筋もの涙が転がる。


「…―ッなまえ……」
『ッひ、あッ…ああ、白哉…さまぁッ』


名前を呼べば、必死に応えようとするなまえ。
腰を打ちつけながら、なまえの唇を自身の唇で塞ぐ。
無理矢理舌を絡め取り、吸い上げ、このまま呼吸すらも奪ってしまおうか。


『ッハァ…ん、くるし…ッ』
「ハァ…なまえ…ッ」


その息の根を止める事は、流石に私には出来ず、唇を解放する。


「…くっ…」
『やあぁあぁゥ…ッああ』


なまえの最奥を突けば、昇り詰めた私と共になまえも果てた。


『ッハァ…ハァ…白哉様…私は』
「言うな。
お前を此処から出しはせぬ」


そう、例えお前に頼まれたとしても。
愛しくて、愛しくて。
仕方の無いお前でも。

その願いを聞く事は出来ぬ。


『そ…んなァ…』


泣きじゃくるなまえ。
その姿を見て、何も思わぬ訳ではない。
しかし、もう嫌なのだ。
お前が他の誰かに笑いかける度。
お前が何時か、私の傍から居なくなってしまいそうで。
そのような恐怖に付き纏われ、指先から消えて行く様な夢を見るのは、もう…

ならば、お前を…
私の手で壊してしまいたかった。


『ッえ…びゃく―…ッああ!』
「なまえ、なまえ…
そなたは、私だけのモノだ」


まどろんでいたなまえの足を大きく開かせて、再び自身を突き立てた。
先程吐き出した私の欲望が潤滑油の役目を果たし、律動は思いの外滑らかだった。


『あ、いや…ッ壊れ…る』


そうだ、私はお前を壊す。
愛しているから。
大切だから。

私の手で、なまえを壊す…

律動を激しく繰り返し、なまえの意識も朦朧としだす。
快感を求め、打ち付ける腰は甘く痺れた。


『ひ、ああぁああ゙!!』
「……ッ」


白濁とした欲望を、またなまえの中に吐き出す。
それでも、足りない、足りない。






『あ、ぅ…あ…ッ』
「ハァ…ハァ…」


なまえのだらしなく開いた口からは、銀色の糸が垂れて。
乱れた黒髪は白いシーツの上に広がり、良く映える。

美しかった、その漆黒の瞳は…
濁ってしまったけれど。

それが、私の望んだ結果。
これこそ、理想の玩具。

自分の思う通りに壊れたのだ。
こんなにも狂気的で、こんなにも魅力的な玩具はこの世に二つと無い。


「…ぅ…ッ」


もう何度目か分からぬ射精。
既に白濁とした液は出なくなっている。
唯、上り詰める感覚だけが私を包み込む。


『ぁ……あ゙』


ビクッと躯を小さく痙攣させ、なまえは壊れた。


思い通りに
理想通りに

これで、なまえは私だけのモノなのだ。
なのに、どうして。

あの日、なまえを壊してしまった日から。

こんなにも、哀しい。

ああ、涙が止まらない。


教えてくれ、笑わなくなった愛する女(ヒト)よ。

何故、そなたは笑わなくなったのか。

その答えは、誰よりも私が一番よく知っているのに。








笑わなくなった恋人
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もう戻れなくなってしまった


(愚かな白哉様が書きたくて。)

11.08.12.18:23
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