  yume-utsutsu..* ◎name change nrt | btl | main 君がいない 49/49 君がいない 背中を向けたボク等。 繋ぐものは、もう何もない。 左手の薬指の誓いも 首筋の紅い華も もう二度と戻れない、と。 知っていても尚、ボクの足は君と逆方向に向かって進んでいく。 回れ右をして、たった五歩。 走れば君に追いつくというのに。 ボクの足は、五歩、君から遠退く。 走馬灯のように、頭を駆け巡るのは嘘みたいに幸せやった日々。 狭いワンルームに戻れば、ベッドは広く、何処にも君は居ないと責められている気にすらなった。 『お帰り、ギン』 「!!」 まだ残る、君の香り、面影。 顔をあげても其処には西日の差し込む君の居ない部屋しかない。 お揃いの歯ブラシ。 君の愛用していた櫛。 訳の分からない化粧水、トリートメント。 ヘアゴムやピン。 その全てが姿を消した洗面台。 こないにも、寂しい。 白いシーツに身を沈めれば、微かに香るのは君の残り香。 君の甘いシャンプーの香り。 愛用の香水に、紅茶の豊潤な薫り。 「なまえ…なまえ…なまえ…ｯ」 名前を呼んでも、君が戻る事はないのに。 名前を呼ぶたび、蘇るのは思い出だけ。 身をひねり、枕を抱える。 君が選んだ枕カバー。 香る君の匂い。 君を何度、このベッドの上で抱いた事だろう。 この枕の上に広がる君の髪に、指を絡ませて。 華奢な体を腕に抱いて、君の悦がるその姿は妖艶で。 ボクを煽り、ボクを掻き立て、ボクを誘う。 その白い素肌を、ボクの欲情で染め上げて。 ―ドクン…ｯ 君はもう、ボク色に染まる事はない。 (…ああ、ちゃう…。 ボクが染められてたんや) 脈打ち、熱くなる下半身。 疼く下腹部。 君を求める体は虚しく、自身で慰める外なかった。 ｼﾞｨｨ…と少し硬いジッパーを下し、取り出したソレは君を求めて主張する。 触れれば指先から熱が伝わり、脈打っているのが分かる。 「ｯ…ﾊｧ…なまえ…」 目を瞑れば、瞼の裏に鮮明に蘇ってくるなまえの表情。 キスをする前に唇を舐める仕草。 ボクをの咥える瞬間の、少し悪戯っぽく笑うその表情。 脳裏のなまえとシンクロさせながら、ボクを自身を慰め始めた。 「ｯ…ﾊｧ…」 小さな掌で優しくボクを包み込み、鈴口に軽く唇を落とす。 薄い唇でボクのを少しだけ咥える。 ﾁｭ…と摩擦音を立てながら、優しく吸い上げる。 なまえの口の中の温度が、熱が、吹きかかると息が。 その全てがもどかしくて、早く中に入れてほしくて。 なまえの後頭部を押さえつけて、無理矢理口の中に含ませる。 『んん、ふっ…』 「ほら、もっと良ォ舐め？ 美味しいやろ？」 『ん、ぐ…ｯ… おいひ…れす…ｯ』 「ほな、全部飲み干せるやろ？ ちゃんと綺麗にしてや」 『ん、はい…ｯ』 ボクの白濁とした液を飲み干す。 唇の端に残るボクの欲。 それを紅い舌先で舐め取る姿。 息を呑む、曲線美。 汚したくなる白。 頬を擽る長い髪。 捉えて離さない漆黒の瞳。 なまえの膝を割って、ボクを求める聖域へ。 ゆっくりと自身を埋め込む。 『ｯああ…ｯギ、ン…』 「キツ…なまえ、もう少し力抜いてくれへん？」 『ん、む…りｯ…ギンの…大き…ｯよぉ』 「…ｯそないな事言うから、抑え切れへんねや」 『ああ、や…ｯ壊れちゃうぅ…ｯﾊｧ』 「良えよ、壊れてまえ」 ボクの下で快感に喘ぐ君。 綺麗な髪を振り乱して、ボクの腕にしがみ付くなまえ… 「ｯく…ぁ…」 なまえのナカは暖かくて、ボクを包み、快感を与える。 「ｯあかん…も、出る…」 『ｯあたしも、イ…ｯく… あ、ああぁああああんｯ』 「そない締め付けたら、もう……ｯ 出すで…ｯく…ｯﾊｧ」 「ｯ出る…」 慰める手の動きは速度をあげて、ボクを追い立てる。 限界が近づき、鼓動が早まる。 頭の中が真っ白になった。 ―ドクン…ｯ… 真っ白になった思考の中で、君がただ微笑んでいた。 「ｯﾊｧ…ﾊｧ…」 独特の倦怠感、脱力感。 ぐったりと手を下し、天井を見つめる。 虚しい。 隣に君が居てへんだけで、こないにも苦しい。 終わった後に君がボクの隣で微笑む。 その手を繋いで、額と頬に唇を落とせば、嬉しそうに笑う君がいる。 ボクにすり寄って、ボクに甘えて、ボクに微笑って。 「ｯ…ぅ…あ…ｯ」 虚無感に堪え切れずに溢れだした涙。 頬を転がり、嗚咽は一人きりの部屋に溶けて消えた。 この狭いワンルームに 君がいない ただそれだけで 全てが無になってしまった。 -------------------- それはボクの心も例外ではなく。 (市丸さんに自慰行為させてみた) 11.10.14.19:50 [TOP] [ top ] |