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この印が消える頃
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この印が消える頃


『ッぁ…ギ…ンッ』
「―…ッハァ…これで良えやろ」


そう言って、あたしの首筋に顔を埋めていた彼は離れた。
あたしの首筋には、三輪の紅い華。
彼のモノである印。


「これ…消える前には、帰って来るさかいに…」


そう言った貴方は何処か寂しげで。
ああ、この人はもう帰って来ない。
本能がそう告げた。

何時だって、貴方は哀しげな表情を浮かべているの。
止めて、そんな顔で、そんな声で。
あたしを見ないで、あたしを呼ばないで。

胸が痛くなる
苦しくなる
息も出来ないほどに


「…ほな、ね。
元気で」


消え入りそうな声。
止めて、行かないで
待って、お願い

…置いて行かないで。


『―…ッ行かないで』


そう言って背を向けた彼の袖を掴んだ。
刹那。

彼の青い瞳が見えた。
それはそれは寂しげな


「―…ッ」
『ッん』


唇に、触れた。
その瞬間、流れ込む"愛している"。
ああ、あたしも
あたしも愛しているの。


『んんっ…ふ…ぁッ』
「なまえ……なまえ…ッ」


激しく、乱暴で。
でも何処か優しくて、寂しくて。
こんなキス、知らない。
こんなキス、要らない。

貴方が傍に居れば、それで―…


『ッあ、ギン…』
「なまえちゃん…」


ギンの細い指が、あたしの躯を弄る。
着物の襟は肌蹴て、其処から滑り込んでくるギンの左手。
あたしの剥き出しになった左の腿を撫でるのは、ギンの右手。

この冷たい手を、もう握れない。

寂しさと、切なさと、快感と。
あたしは耐え切れずに涙を流した。

それに気付いたギンは、あたしの頬を流れる涙を舌先で掬う様に舐める。


「泣かんといて、なまえちゃん。
その涙、もう拭ってあげられへんねやから…」


やっと言ったね。
もう、帰れないって。

…だったら、連れて行ってよ…


『ッあ…ん、ダメぇ…』
「ご免、我慢出来ひん…
それに、ほら。
なまえちゃんも欲しがっとるやない」


骨ばった指が二本、あたしの中に入って来る。
内壁を擦って、奥へ、奥へと。

脚がガクガクする。


『ギ…ン、もう…ッ脚が』


そう言えば、ギンはあたしを軽々と抱き上げて布団の上へと連れて行く。
優しく降ろされ、あたしの上に覆いかぶさりまた噛みつく様なキスをされる。


『ッああ…ッんぁ』
「なまえちゃんの此処、大洪水やね」


クス、と何時もの様に意地悪な微笑みを浮かべる。
グチュグチュと、わざと水音を響かせながらあたしを翻弄する。

最後だと分かっていたから、あたしはその指を堪能するしかなくて。
最後の最後まで、貴方を感じさせて。


『ッハァ…あ、も…』
「あかんよ、まだイッたら。
ほら、此処好きやろ?」
『んぁ!?…そこ、らめぇぇえ』

「気持ち良えて、言うたら良えのに」


ギンの指が、ある一点を擦り、あたしの躯は信じられない位痺れる。
脚が震えて、巧く息が吸えない。


「…ほら、イき?」
『ッああぁあァあ!』


ビクビクッと大きく痙攣をして、独特な倦怠感に包まれる。
そんなあたしの頬に唇を落とし、首筋を舐める。

自分で付けた紅い華を、愛おしそうに撫で、少し哀しげに微笑った。


「…まだ、終わらへんよ」
『…ッえ…ああ゙…ま、ッだ…ダメだって…んぁあ』
「クッ…きつ…」


達して間も無いあたしを、容赦なく貫くギンのソレは、何時もよりもずっと太くて硬くて。
その質量と熱に、あたしは喘ぐ事しか出来なかった。


「ああ、そない乱れて。
なまえは淫乱やね」

「腰、動いてるで?
そない気持ち良えの?

「蜜、溢れすぎや。
凄い事なってんで」

「綺麗やね、なまえちゃん」

「もうイきそうなん?」

「ああ、イッて良えよ」


色々な言葉を投げかけられたが、それに応える余裕等なく。
胸の痛みと、涙と快感に襲われて。
貴方を忘れない様に刻みつけた。


『ギ…ンッ』
「ッ何や…?」


途切れ途切れに名前を呼べば、優しい声音が降って来る。
あたしは両手を伸ばし、ギンの首に巻き付いた。



『愛してるよ』



そう囁けば、嬉しそうに微笑んで



「―…ボクも…
愛してるよ、なまえ」


そう囁いた。
貴方からの最後の愛の言葉。

そして、ラストスパートとでも言うかの様に、激しく律動を繰り返す。


『やあぁあぁッ
壊れ…ッうよぉ』
「ッ良えよ、壊れて…
そしたら…ずっと…一緒や…ッ」


ガンガンと、奥目掛けて突き上げるその衝撃にも似た快感。
背中を快感が駆け抜けて、腰が甘く痺れる。


『もぉ…ほんと…ッ
イッ……ちゃあぁッ』
「ボクも…限界や」
『はぁ…ゥ…ああッ
やああぁあ…んんッ』


脚をピンと伸ばして、爪先を快感が抜けて行った。
全身の力が抜けて、布団に意識すらも奪われていく。

体内にギンの熱い欲望を感じた。

ああ、これで、さようなら……







『―…』


朝日に目を覚ませば、ほら。
隣にはギンは居なくて。

乱菊さんが、涙目で声を震わせながら部屋に入って来る。


「―…ギンが……あんたの事宜しくって」


ズキン、と胸が痛んだ。
鼻の奥がツンとする。

あたしは涙を誤魔化す様に脱衣所へと逃げた。
鏡に映るあたしの首には、三輪の紅い華。

ギンのモノだという印。

ふと、鏡の下の方に何か書いてある事に気が付いた。


( ギンの…文字… )







印が消える頃

迎えに行くよ





この印が消える頃
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もう二度と、離さへん。


(双極でのお話)

11.08.11.13:30

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