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誰よりも怖がりで。
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誰よりも怖がりで。






ああ、どうして貴方は何時も。

哀しげな蒼い瞳
寂しがりやで
怖がりな蒼い瞳。

あたしは、此処よ…

雨が降り始めた。
窓を叩く勢いが強くなり始めて、家の中に居ても少し肌寒い。


( ギン、遅いな… )


一週間前から、極秘任務に就いたギン。
今日帰って来る予定なのに。

その"今日"は、あと数分で明日に変わってしまう。

あたしは読んでいた書物を閉じて、ゆっくりと立ち上がった。
窓に近付けば、雨の所為で真っ暗になった空。

ああ、今夜は貴方と同じ。
銀色の月が見えないのね。
逢えない時は
必ず見ていたのに。
見えない月は
ギンの仮面の裏の様。
何年経っても、その笑顔の裏は見えてこないもの。


雲よ、雨よ。
月を隠さないで。
あの人を、隠してしまわないで。


窓の外を眺めていたあたしの耳に、届いたのは扉の開く音。
不安定な、あの人の霊圧。


『…ッお帰りなさい』


涙目で玄関まで駆け付ければ、其処に佇むは長身の男。
銀色の綺麗な髪は雨に濡れて。
蒼い瞳は、閉じられたまま。


『……ギン…?』


項垂れる彼の表情を伺おうと、覗き込む。
白い肌は冷え切っていて。
頬を伝う雨が、涙の様にも見えた。


「なまえ……」


ああ、そんなに切なく呼ばないで。
まるで消えてしまいそう。


「なまえ…なまえ…」


執拗に名前を呼び、貴方の少し骨ばった手があたしの頬に触れた。
その凍えた指先。

ねェ、どうしたの?

そう聞く前に、あたしの唇は塞がれた。


『んぅ…』


突然のキスに、空気を奪われた。


「ハァ…ッなまえ…」


少し荒々しいキス。
歯列をなぞり、舌を絡め取られて。


「なまえ…」
『ん…ふぁ・・ッ』


応えたい、応えたいよ。
貴方が名前を呼ぶ度に。

でも、少し酸素が足りないから。
あたしは一生懸命舌を絡ませて、キスで応えた。

ねェ、羽織に付いてる血。
貴方の物じゃないのね。

…また、人を殺したの?




ねェ……



















哀 し い の ?







「なまえ…なまえちゃん…」
『…ッんぁ…』


舌が離れると、名残惜しそうに二人の間を繋ぐ銀色の糸。


「……ご免なァ。
此処、寒いやろ」
『え…あ…』


ギンの大きな腕に抱えられ、あたしは寝室の布団の上に寝かせられた。


『ッあ…』


浴衣の衿から、冷たい掌が忍び込んできた。
その手が優しく浴衣を脱がしていく。

あたしの肌が、夜の闇の中で露わになる。


「良ォ見たい…」


そう言ったギンは、灯篭に火を点けた。
淡い橙色が、あたし達二人の影を作る。


「綺麗や、なまえ…」
『ギ…ッぁ』


浴衣を完全に脱がされたあたし。
ギンの目の前で生まれたままの姿を曝す。

そんなあたしの肌を、なぞる様に触れる。


「ああ、可愛らし」


そのギンの指が与える快感一つ一つに、あたしは敏感に反応してしまう。


『ん…ギン…ッ』


ギンの細い指が、秘部に触れた。


「ああ、蜜一杯やで」


クス、と小さく漏らす声。
ギンの白い肌が、橙色に照らされて。
雨の所為で濡れた髪も、妖艶な笑みも、全部。
あたしの快感を煽る材料でしかない。


『あ、あッ…ギン…!』
「此処、好きやろ?
早よ、達って。
もっと綺麗になれるやろ?」
『んう…あッ』


良いトコばかりを狙って擦るから。
あたしの頭の中を白い光が幾つも弾けた。


「達けたみたいやねェ。
達く時のなまえの顔、綺麗やわ」


そう言ってあたしの蜜がたっぷりと着いている指を、わざとあたしに見せる様に舐める。


「美味し。
直接貰ても良え?」


あたしの返事なんか聞かずに、ギンはあたしの脚を大きく開かせて、その間に顔を埋めた。


『ああッ…んぅ…ッあ!』


陰核を舌先で押し潰したり、転がしたり。
時々蜜を啜るから。

あたしの絶頂の波はまたすぐにやってきて。


『や…ッイク…!』


ギンの綺麗な銀色の髪を握り締めて、大きく背中を反らせた。


「ボクも、もう限界や」


ギンはそう囁いて、猛ったソレをあたしの蜜壷に埋め込んだ。
指や舌とは違う質量。違う熱。


「ああ…溶けてまいそうやね…ッ」


余裕の無い笑みも、色っぽい声も。
その熱も、汗も、全部。

あたしだけの物。


「ッなまえ…なまえちゃん…ッ」
『ッギン…!あ…ッ』


激しく打ち付けて来る腰。
流されない様に。
意識さえも、振り落とされてしまわぬ様に。
あたしは両足をギンの腰に絡めた。


ギンがこうして、あたしを激しく求めるには理由が有る。

ねェ、そうでしょう?

貴方は護廷十三隊の中でも、残虐だと噂されている。
その笑顔のポーカーフェイスを一切崩さないで。
人を切って、また笑う、と。

だから、今回みたいに極秘の任務に就かされる。
知ってるのよ、それが人殺しの任務だって事くらい。

そして、貴方が本当は弱虫なのも、知っているの。

哀しいんでしょう
寂しいんでしょう
恐ろしいんでしょう

自分が、何時か人では無くなってしまいそうで。
本当は人を斬る瞬間、躊躇うのでしょう。

その人の命を奪ってしまう事を。

元々、心の優しい人だもの。
知ってるのよ。

罪悪感で押し潰されそうなのも。

ねェ。

自分が人間で有る事を確かめる為に
その罪悪感を少しでも軽くしたい為に
自分の存在を認めて欲しい為に

あたしを抱くのでしょう
あたしを呼ぶのでしょう

大丈夫、大丈夫よ。

あたしは此処に居る。

貴方の傍に居るから。


「ッ…なまえちゃん…」
『ッギン…大丈夫…よ。
愛しているから』


そう言って微笑んだら、ほら。
子どもみたいに無邪気に笑う貴方。


「……ボクもや」



―…愛してる


一層激しく腰を打ち付けられる。


肉と肉がぶつかり合う音。
体液の混じり合う音。
お互いの声にならない声。


全てが、貴方の存在の証。


『ギン…ッたし…、もう…!
ああ、んッ』
「クッ…ボクも、イきそうや…
一緒にイこ?」


あたしはもう声を出す余裕すら無く。
唯必死に頷く。


「ッ中…出して良え?」
『ああッ…んぅ!
良…よ…ッあ…ギンを、感じさせて…ああゥ』


ギンの腕にしがみ付いて、快感に耐えるあたしを見て、ギンは静かに囁いた。


「おおきに」
『ああっ…も、だめえぇえ!!』
「……ッ」


躯を大きく弓なりに反らせて、あたしは達した。
ギンもその締め付けに持って逝かれる様に、あたしの中に欲の全てを吐き出した。

その熱に、内側から溶かされそうだと、本気で思った。






「―…なまえちゃん」
『なァに?』


白いシーツに二人で包まり、互いの肌を触れ合わせて、熱を分かち合う。
ギンの優しい蒼い瞳が、あたしに向けられた。


「結婚、しよ」


穏やかな、でも少し寂しそうな表情。
その奥に隠されているのは、あたしへの想い。

ねェ、そうでしょう?

今、やっと見えたの。
貴方の仮面の裏側が。

笑顔の裏には、溢れんばかりのあたしへの愛。
そして、人を殺す度に失われていく自分の存在価値。


その罪悪感を
心の傷を

あたしは一緒に分かち合う事しか出来ないけれど。
貴方と一緒なら、その全てを背負う覚悟は出来ている。


『うん』


小さく頷けば、あたしの左手の薬指にキスを落とす。
強弱を付けて吸って、時々甘く噛まれる。


白い指の付け根に、紅い小さな華。


「指輪の代わり。
ちょっとの間、これで我慢してや」


あたしはその紅い華を見つめて、小さく微笑んだ。


誰よりも怖がりで、臆病で。
誰よりも、本当は優しい貴方の傍に。

ずっと一緒に居たい、と心から思ったの。


だから、幾らでもあたしを求めて。
あたしには貴方が必要だと、確信できるまで応えるから。



誰よりも怖がりで。
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震える瞳は何時も君を捉えていた。


(本当は臆病な市丸さん)


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