第章:訪れ












穏やかに晴れ渡った空の下。
流れる雲を見つめながら、頭の中を空っぽにするボクが居た。

ボクは誰かを愛し
誰かに愛される日が来るのだろうか。

そないな途方も無い考えを張り巡らせて、脳内から仕事の事を追い出した。
隊首室を抜け出して来て、三十分は経過しとる。
霊圧を消しているとは言え、イヅルに見つかるのも時間の問題やった。

永い御説教を喰らうのは嫌やな。

そない、呑気な事を考える。
御説教が嫌やったら、サボらへんかったら良えやない。

ボク自身、そう思う。

せやけど、いざ死覇装を見に纏い隊長羽織を翻せば蘇る残像。
生温かい血の温度。
咽返る様な血の匂い。
目の前に横たわる、"誰か"にとって紛れも無く大切な人。
"誰か"の想いを犠牲にして、『隊長』として此処に居てるのは気が滅入る。

でも、その時のボクには選択肢が無かったし、他に道を見つけられへんかった。
ボクに殺されたアイツが悪い。
そう言い聞かせる事で、風に雲が流される様に、ボクの人生も巧い事流れとった。

ふと、物凄い勢いで近付いて来る刺々しい霊圧に気が付いた。


「市丸隊長、居らっしゃいますかッ??!」


珍しく額に青筋を浮かばせて、ひょっこりと屋根の上に顔を出したイヅル。


「居てへんで」


見え見えの嘘に、イヅルの大袈裟な溜息が聞こえた。


「今すぐ。
隊首室に御戻り下さい。
書類が溜まっています」


"今すぐ"を強調させるイヅル。
仕事が溜まっとるって、分かってて帰りた思う奴なんて、この世に何人居てるんやろ。
帰らなあかん・とは思うかもしれへんけど。
帰りたい・と思う人は居てるんやろか。

…ボクも何時か、誰かの元に帰れたら良えのに。

帰る場所を持つ人を、帰りを待つ"誰か"から奪ったボクに、帰る場所なんか無くても良えのかもしれへんけど。


「隊長、行きますよ」


イヅルの怒気を含んだ冷静な言葉に、現実に引き戻された。


「何や、空気読んでくれへん?
今ちょっとおセンチやってんで?ボク」


肩を竦めて、やれやれと首を振ったが、イヅルから聞こえたのは呆れた様な溜息だけやった。
ボクの言い訳なんかよりも、仕事の方が気になってしゃァないっちゅう顔や。


「はいはい、今行きますよ」


ボクも負けじと溜息を吐いて、イヅルが促す隊首室への道を一歩一歩歩き始めた。

ボクは歩ける。
新たな道を。

あの人は歩けへん。
未来への道を。

明日がなくなるっちゅうのは、一体どういう感じなんやろうか。
昨日まで笑うてた人が、無言のまま、目の前から消えてしまったとしたら。
遺された"誰か"は、どうやって明日を思うのやろか。
大切な人が、突然明日から消えてしまったら。
"誰か"はどうやって明日を歩くのやろうか。

ボクを恨む事で生きるとして。
憎しみという感情に溺れるとして。

ボクはその人に何をしてあげれば良えんやろう・て。
考えて見つかったのは"死"という極めて単純な一文字だけで。
その"誰か"に殺されれば、それで良えんやろうか・て。
思うた所で、それは虚しく夢になるだけで。

それは、あの日殺した人の、大切な"誰か"が、誰なのか。
ボクには分からへんかったからであって。
そして今日も、自分が殺される所を思いながら瞼を閉じる。

夢物語は、此処でおしまい。



「知ってますか、市丸隊長」
「何をや」


今日は珍しく隊長席に座って仕事をするボクに、お茶を注ぎながらイヅルが言う。
主語の抜けた質問に、ボクは質問で返す外無かった。


「噂ですよ。
天才新入隊士の話です」


やっと離しが繋がった所で、やっと、ああ・と頷いて見せた。


「真央霊術院を二年で卒業。
入隊と同時に席官確定ですって。
本当に凄い天才ですよね」


イヅルが楽しそうに良いながら、急須をお盆の上へと戻した。


「皆さん、市丸隊長以来の天才だって、噂していますよ」
「ボク以来?」
「ええ、市丸隊長は真央霊術院を一年で卒業。
入隊して即・席官。
誰も真似出来ないと思っていたんですけどね」


そないな事も有ったな、と。
霊術院生だった頃の、ボクの記憶はその程度で。
唯、入隊して直ぐの事件だけは酷く記憶に焼き付いていた。

あの悪夢に、何度魘(ウナ)されて目を覚ました事か。
真っ暗で孤独な夜は、罪の意識に捕らわれるボクを見て見ぬフリをする。
だからボクは、夜の優しさに甘えて、夜の闇に声を溶かして泣いたんや。


「…その天才は何処の隊?」


ボクの質問に、イヅルは斜め上に視線だけ遣る。
もしかして、またアイツが…
しかし、イヅルの血色の悪い唇から漏れたのは、予想とは違う答えやった。


「確か…六番隊…だった気がします」
「六番隊…ねェ…」
「歳は朽木隊長や市丸隊長と変わらないみたいですよ」


イヅルの言葉に、眉を顰めた。
その歳で死神を目指したんか。
と。拭えない違和感に、表情を歪める。


「何でも、下の御兄弟と歳が離れているらしくて。
兄弟が大きくなるまで、彼等を残して瀞霊廷には行けないという事で、霊術院に入学するのが遅くなったらしいですよ」


イヅルの情報網にも関心だが、その天才新入隊士にも関心した。
夢を追うよりも、後を付いて歩く兄弟を想うその気持ちに、厭味では無く純粋に拍手を送りたなった。


「もう入隊しはるの?」
「はい、来月にはもう任に就くらしいです」


イヅルはそう言って、お盆を持って給湯室へと入って行った。
ボクは少しの間、短すぎる霊術院時代の事を思い出して、直ぐにまた書類へと視線を移した。


窓の外に視線を向けた。
晴れ渡った透き通る様な青い空。
あの日雨が降っていたなら、と。
考えてしまうのは悪い癖。

雨が降っていたら
あのこびり付いた血も
咽返る様な鉄の匂いも
全部、全部
流せてしまえたのに。

ついでにあの日の残像も
消し去ってくれたなら…


「―…長?隊長?」
「…何や?」


イヅルが心配そうな表情でボクを覗き込む。
イヅルの声にハッと我に返った。


「この書類に判子をお願いします」


イヅルが書類を差し出して、判子を押す場所を指差す。


「ああ、ほなこれで」


ボクは言われた通り、指定された所に判子を押してイヅルに返した。


「大丈夫ですか、隊長。
顔色があまり宜しくないのですが」
「それはイヅルかて同じやろ」


と意地悪く笑って返すと、


「ええ、全く。
誰かさんの所為でね」


と、厭味で返してきよる。
イヅルはそのまま、自分の席へと腰を下ろした。
変わらぬ日常。

変化なんて、望んでへんかった。
せやけど、運命っちゅうのは気ままなもので。
望んでもいない方向へと、時間を流してしまう。
時間は悪戯に、運命に流れを任せて。
唯、ボクを苦しめたいのか、何なのか。
ボクには分からへんかったけど。


例の天才新入隊士が入隊した日の事やった。
入隊式が執り行われた後、各隊に書類が回って来た。
隊長が新任される場合は、ボク等も新任の儀っちゅうモンに参加せなあかんのやけど、今回は唯の新入隊士。
まァ、異色で飛び抜けた才能と、上位席官になったモンやから、こうして各隊に書類が回される。


「隊長、例の新入隊士の書類です」


と、イヅルに書類を渡された。
特に興味も無かったけれど、目を通しておくのも悪くは無いと、受け取った書類に視線を走らせる。

凜とした面持ちの写真の隣に、記載されている名前。
その名前を見た瞬間に、全身に何かが駆け抜けた。
駆け抜けた"何か"は、一緒に鳥肌も引き連れて、ボクの足から指の先まで走り抜ける。

『みょうじなまえ
出身:北流魂街79地区:草鹿
配属:六番隊第四席―…』


みょうじ……


「市丸隊長?どうかなさったんですか?」
「ああ、いや…この子、家族は?」


ボクの質問に、イヅルは書類にもう一度視線を落としてから、答えを紡ぐ。


「…ああ、此処には記載されていませんね…
兄弟が三人と、確か…」


底で一旦言葉を切ったイヅル。
次の言葉までが、やけに長く感じる。


「―…父親が、元・五番隊第三席だった筈ですが」


イヅルの答えに、頭が揺れた。
視界が歪み、全てが歪む。
ぐらぐらと、まるで頭の中で鐘付きをしているかの如く、鈍い痛みと音が反響する。

夢物語は此処でおしまい。

誰が言った。
そないな事。

夢物語は幕を開けて
今、現実という舞台に舞い降りたのは残酷で美しい事実。


そう、酷く美しい事実は、ボクを容赦無く痛めつける。


"誰か"が"誰か"を想い
"誰か"の帰りを待つ"誰か"が居て。
美しい事実の上に並んでいるのが日常で。


"誰か"が居なくなった明日を歩むには
憎しみという感情に溺れて生きるしか無い、と。
取り戻せなくなった日常は、唯々残酷なだけで。


夢物語は、今此処で
現実の舞台へと変わったんや。


幕は開いた。


訪れたのは、美しい事実と残酷な日常。

それがボクを壊すか
はたまた壊されるか。

それは誰にも分からないけれど
それは確実に、其処に有った。




結局、顔色が悪く、体調も悪くなったボクは、有ろうことかイヅルに早退させられた。
いやいや、ボクが早退するんやったら、イヅルがせぇ言うたけど、ボクが残ったら仕事になれへん言われた。

…で、今に至ると。


昼を過ぎ、太陽が傾き始めた。
この時間帯の瀞霊廷は、活気が有る。

少し遅めの昼食を摂りに、死神達が隊舎から出て来ている。
それを引き込もうと、躍起になって声を掛ける料理人や女将達。

ボクなんか隊長羽織着とるモンやから、よっぽどの身の程知らずな奴以外、下手に声を掛けられへんで済む。
まァ、声を掛けられるのが嫌やったら、さっさと家に帰ってまえば良え話やけど。

家に帰る前に、ボクは寄りたい場所が有った。

ボクが向かうのは、あの日、あの時、ボクの手によって明日を奪われた人の墓。
瀞霊廷の郊外に有る森林を抜け、その丘に、忘れられた様に立てられた墓標。
此処に来る度、胸が締め付けられた様に苦しゅうなる。
それも、仕方の無い事。
ボクが一生背負っていかなあかん痛み。

森林を抜けた頃、もう日は傾いて長い影を剥き出しの地面に作っとった。

丘へと続く青い草の、一本一本を踏み締める様に歩く。
丘を登り、墓標を見つめた。
悔いた気持ちで墓前に立つのは、これで何回目やろうか。
もう二度と、この人に明日は無いのだと、そう考えた時に堪らなくなる。
目頭がじわじわと熱を持ち始めるが、あと一歩の所で涙が出ェへん。

もう何十、何百年と、それを流していない。
それがどれほど暖かいのか、乾いた頬がどれだけ冷たいのか、ボクはもう覚えてへん。


「えらい…すんません…」


謝ったって、何も始まらないし、何も終わらない。
この苦しみから逃がれる事も、キラキラ輝く明日を見る事も。

ボクは居たたまれへん気持ちに負けて、瞬歩で隊舎付近まで戻った。
そしてその足で、あの事件の有った場所へと赴く。

この人の明日を奪った、その事よりも、その時のボクに選択肢が無かった事の方が悔しかった。
結局ボクは、気紛れな運命の手駒の一つで。
運命の気の向くままに、何時だってこうして、立ち止まるんや。

時間すらも運命の手駒に過ぎひんのに、ボク等は何時だって、全ては自分中心やて考える。
目隠しされとる癖に、目の見えるフリをして。
真実を追いかけて走るから、現実に躓いて転ぶんや。

ボクはあの日、転んだまま起き上れてへん。
今でもボクは、此処に倒れたまま。
あの日死んだのは、あの人や無くて…
ほんまはボクの情(ココロ)かもしれへん。

あの日、全てを此処に置いて行った。
そう、それはあっけなく、唐突で。
"死"という単語の理不尽さに、ボクの情は負けたんや。

















全てが夢だったのなら。
そう思わない日は無い。
あたしは今でも
"アイツ"の顔を忘れない。





この頃、空は良く晴れている。
あの日の空も、晴れていた。
雲一つ無い青天で、あたしは出掛ける父に言った。


『いってらっしゃい』


振り向いて、行って来ます。と微笑んだのは夢の中で。
実際のあたしは、その日、"いってらっしゃい"が言えなかった。
何で、今日に限って。
そう思って、哀しくて、自分を恨んだ。

でも、それよりも憎い相手が居る。

あたしは、"アイツ"を殺す為だけに死神になった。
幼い妹、弟達が育つまで時間は掛かってしまったけれど。
恨み辛み、果たす為。
復讐の舞台は作られた。

そして運命は悪戯に時間を流して、今、ゆっくりと幕が上がる。


『お早う御座います。
此の度、新入隊士として六番隊に入隊しました。
みょうじなまえと申します。席位は、第四席という事で決まりました。
ご迷惑をお掛けすると思いますが、何卒、宜しくお願い致します』


比較的、丁寧な言い方で頭を下げる。
新入隊士で、おまけに"天才"なんて言われて…
更に、所属した隊が朽木家の当主が代々継ぐ六番隊。
其処の四席になってしまったものだから、風当たりが強いのは仕方ない。
出来るだけ波風立たない様に、控えめに行こう、と決めた。

あたしは唯、復讐の為にやってきた。
"アイツ"の顔と、父の最期に遺した言葉を糧に、ずっとずっと。
気が付けば霊術院ではやる事が無くなっていた。

皆はあたしを天才だ、と持て囃すけれど、あたしは"アイツ"を殺すという目標だけに向かって走っていたに過ぎない。
死神になりたい、という輝かしい夢を追って、ゴールに向かって走っている人達とは違う。
あたしが死神になったのは、"アイツ"を殺すのに、一番手っ取り早い方法だったから。


だって"アイツ"が死神だったから。
あたしと歳の変わらない子供が。
あの時、何席だったのかは知らない。

今、"アイツ"がどの地位に居るかも分からない。
そして、"アイツ"の名前すらも分からない。

唯、返り血を浴びて不敵に笑う顔が、やけに鮮明にくっきりと瞼の裏に張り付いている。
その顔に恐怖等は微塵も感じ無かった。

"アイツ"に対する憤りだけが、心の中に沈んで行った。
死神という道を、あたしは"アイツ"を殺すという目標の為の、踏み台にしただけ。
毎日毎日、ドス黒いモノが胸の中に渦巻いていて、それを取り除く為にはどうしたら良いんだろう・て。
考えて出した答えは"死"という余りにも単純な一文字で。

答えを見つけてからは、あたしは唯走るだけだった。




「…みょうじ、早速だが執務を頼めるか?」


朽木隊長の凛とした声に、ハッと我に返る。
詰所にはもうほとんど人が居なくて、何時の間にかあたしの紹介は終わっていた様だった。
茫然と立ち尽くしているあたしは、慌てて声のした方を振り返る。

整った顔立ちが目に入る。
綺麗な瞳に、自分が映り、胸が高鳴った。

そう言えば、恋と言う物をした事が無かった。
その位、あたしの人生は真っ黒だったから。
"アイツ"を殺した後の事なんて、考えた事も無かったけれど、殺したら、恋をしてみようと思う。

…なんて、我ながら狂気じみた思考を、無理矢理振り払った。


『はい、畏まりました。
何をすれば良いですか?』


そう問うと、朽木隊長は付いて来い、と一言発しただけで、そのまま歩き出した。
あたしは足早に朽木隊長の後を追った。

朽木隊長と向かったのは、隊首室だった。
朽木隊長に促され、隊首室に入る。


「兄にはこれを頼みたい」


そう言って朽木隊長が指差したのは、ぎっしりと資料の詰まった本棚。
あたしに任された仕事は、一番最初としては無難な、資料の整理だった。


「年代別に並べてくれ。量が多いからな…
恋次だけでは終わる頃、私は今よりよっぽど年老いているだろう」
『ふふっ
分かりました、どうにか今日中に終わらせます』


朽木隊長は頼む、と言ったきり、書類に没頭した。
あたしも邪魔にならない様に、余り物音を立てない様に気配りしながら作業を進めた。

…そういえば、恋次…阿散井副隊長ってどんな人なんだろう。
新入隊士紹介の儀の場に居なかった。
顔も知らないのに、挨拶出来るかな…

と、考えている時だった。
隊首室の扉が、決して静かとは言えない音を立てて開かれた。
長身の赤い髪をした男が、書類を両手一杯に抱えて入ってきた。


「朽木隊長、見て下さいよ。
この書類!!三番隊が全部止めてやがったんですよ!」


隊長に話しかける態度とは、到底思えない言葉遣いで、朽木隊長の座る席に書類を置く。


「吉良が青い顔で"今終わらせました"って。
アイツ、書類に埋もれて死ぬのが夢なんスかねェ」


はぁ、と溜息を吐いたその人は、あたしを見つけた途端目を丸くさせた。


「あ?
誰ッスか、あの子」


あたしを人差し指で指差しながら、朽木隊長にその答えを求める。
失礼にも程が有るだろう。
人を指差しちゃいけないんだぞ。
朽木隊長は書類に視線を置いたまま、冷静な口調で言った。


「彼女がみょうじなまえだ」
「ああ、例の天才新入隊士…」


そう言って赤髪の男はあたしに近付いて来る。
近くで見ると、よりデカイな、おい。
ていうか、変な眉毛。


「おう、俺が副隊長の阿散井恋次だ」


大きな手を差し出してくる男。
こんな変な眉毛の男が副隊長だっただなんて。
と、内心思ったものの、それを作り笑いの後ろに追いやる。


『説明に預かりました、みょうじなまえです。
宜しくお願い致します。阿散井副隊長』


大きな掌に自分の掌を重ねると、酷く小さく見えた。

「仕方ない…みょうじ、資料の整理は程々にして此の書類を頼む」
『はい、分かりました』


あたしは阿散井副隊長から手を離し、朽木隊長の元へと駆け寄る。


「…本当に、三番隊には困ったものだ」


ボソリと呟いた言葉。
三番隊とは、そんなに適当な隊なのだろうか。
この量の書類を溜め込むなんて、よっぽど酷い隊長なんだな。
と、此の時まではその位の印象でしか無かった。

しかし、運命の歯車はもう動き出している。
一秒、一秒と経つ度に、少しずつ幕は開ける。

そう、夢は何時か醒めるもの。
これが全て夢だったら。
そう考えてしまうのは、全てを無かった事にしたいから。

これが全て夢だったら。
そう思わない日は無い。

夢でない、生々しく其処に有る現実。
目を背けて来なかったのは、"アイツ"が心底憎いから。
それ以外に、あたしは生きる術を知らないから。






第一章:訪れ
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1ページ目を捲れば、夢物語の始まり始まり。


(生き方を忘れたとき、其処には憎悪しかなかった)





 

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