第十六章:告白
















ボクはどないしたら良かったのか。
今更考えても、時計は戻らへん。
回れ右したとしても
過去はそこには無い。









『…違うの…』


君は泣きそうになりながら呟く。
唯、"違う"と。
一体君は、何を否定しているのか。


『―…全部…嘘…』


嘘…その単語が、ボクの胸を貫く。
なまえちゃんはおもむろに立ち上がった。


『帰る』


なまえちゃんの体に合わへんボクの浴衣を引きずりながら、襖を開けた。


『―…バイバイ




















ギン






―…脳が痺れた気がした。











『―…ッッ』


あたしの右手首を、アイツの冷たい手が捕らえた。
襖の外に踏み出した足は、前に進めない。


『何』






これ以上
運命を交えたくない






『………離して』







一刻も早く







「……なまえちゃん…」





振り向くな、自分


























「――……好きや」




運命に魅入られた
貴方が憎い。



















沸き起こる衝動。
甘く痺れていた心は、すっかり焼け焦げた。


「―…隊長…隊長。
顔色が宜しくありませんが」
「……イヅル」


ボクを見つめる、穏やかな瞳。
イヅルを好きになれたら、きっとボクは、こないにも苦しまんでも良かったやろう。


「明日は西流魂街で演習ですよ。
体調が優れないのでしたら、早めにお休みになって下さい」


ボクはそのまま、半強制的に家へと帰らされた。
ボクの家には…もうなまえちゃんは居てへん。










「なまえちゃんが…好きなんや…」





細い手首を掴んでいても、彼女はこっちを見ィひん。
唯、ボクの手を振り払って


『あたしは……
貴方が憎いの…』


そう言って出て行った。
言うつもりなんてなかった。
甘い炎に気付かへんフリを決め込むつもりでいた。
それやのに、ボクの唇は…
嘘を吐き過ぎたんや。
肝心な時に、嘘(キミ)は姿を隠してまうんやね。

















「お帰りなさいませ、主。お早いお帰りで」


家に帰れば、「お帰り」を言うてくれる人が居て。
ボクを受け入れてくれる人が居て。
望んでた居場所を手に入れられた筈やのに、この埋まらへん穴は何やろうか・て、考えたら単純やった。


ボクは君が居てへんと
息をするのも忘れてまいそうや






第十六章:告白
--------------------
言いたくなかった


(聞きたくなかった)





 

[back]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -