おかっぱ vs 銀きつね 萌え競争




 











「ちょっと呑み過ぎと違う?」
『ん〜、まだ平気』


呂律もまだ回っているし、意識もはっきりとしている。
唯、いつもよりも少し多く飲んでいるのと、少しスピードが速いだけ。


『ね〜ェ、ギン』
「ああ、アカン。クダを巻きよった」
『まだ巻いてないもんっ』


頬を含ませながらカウンターに顎を乗せる。
目の前にはお酒が入ってキラキラと光るグラス。

ギンと付き合うようになって、もう2年。
素直じゃない性格の私に、いつもギンは可愛くないわ〜って笑うけど。
いつも心にもないことをつい言ってしまうこの口が憎い。



『私、可愛くないよね』


唇を尖らせて目の前のグラスを両手で弄る。


「何や、急に」


くすくすと、少し困ってように笑うギン。
眉尻を下げて、優しく笑う。

その顔が好き、と。
素直に口に出せたなら。



『―……ッ』


ああ、ダメだ。
「好き」の一言が、たった二文字が。
舌先を転がってはいるのだけれど。

それを言う自分を想像したら、恥ずかしくて死にたくなる。

思わず顔を突っ伏すと、


「ああ、こらあかん。奇行し始めた」


と、私からお酒を遠ざける。
でも、今の私にはお酒がないと!
と、慌ててお酒を引き戻す。


「あかんて、なまえちゃん。結構飲んだやろ?」


子どもをあやすように、やんわりとお酒を遠ざけていくから。
むっと少し唇を尖らせ、お酒を勢いよく引き戻してそのままの勢いで煽った。

くらり、歪む視界。
水の中にいるみたいにぼんやりと聞こえる中で、あ〜あ。とギンが苦笑したのが聞こえた。


『ッギン』
「はい」


くすくす、と諦めたように今度は笑い出すギン。


「さて、ボクは何を叱られるんやろか」


と、カウンターの椅子を向かい合わせにして座り、ギンはわざとらしく背筋を伸ばしてシャンと座っている。


白すぎる肌。通った鼻筋。
閉じられているけど、優しい色をした瞳。
弧を描く、ギンの薄い唇。


―…あ、キスしたい。



ふと思ってギンに問いかける。


『―…ス…たぃ?』
「ん?」


恥じらいがまだ少し残っていて、声が小さくなる。
聞き取れなかったギンは、優しく聞き返してくる。


私はキリッとギンに向き直り、はっきりとした口調で聞いた。


『キス、したい?』


その言葉に、ギンは驚いたように少しだけ開眼して見せた。
淡い蒼色の瞳が、ちらりと見えた。


「何や、急に。どないしたん」


予想外の言葉がウケたのか、くつくつと喉で笑いを転がすギン。


『聞いてるのはこっち!』


頬を膨らませれば、更に可笑しそうに笑う。


「そらァ、ボクはいつでもしたいけど。なまえちゃんは違うの?」


いつでもしたい、というセリフが妙に照れくさくて言葉につまる。
でもここで、したくない。と答えたら。
また可愛くない。と笑われる。

羞恥心との葛藤のなか、ようやく小さく頷いてみせる。


「ほな、こっち向いて」


そう言うギンの言葉に、嫌な予感。
今上を向いたら絶対にキスされる。


こんな赤面を見られる上に、キスまでされたら心臓が持たない。
と、色々考えていたら。


「何や、したないの…」
『…ぁ…』


寂しそうな声が降ってきたから。
その声に釣られて思わず上を向けば、にんまり笑うギンの顔。
騙された、と後ずさろうとした私の後頭部を、ギンの大きな手がガッと抑える。


「逃がさへんよ」


低く、甘い声で耳元で囁かれ、次の瞬間には唇を奪われていた。

なんてこった。
どうやら私は、貴方に完敗らしい。










(たまには可愛らしゅうなるんやね)(……最初で最後だもん)
vsオカッパ萌競争。
〜市丸編

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素直じゃない君も、愛おしい。


(強引なギン萌え)




二人の萌え勝負、結果は皆様次第。


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