おかっぱ vs 銀きつね 萌え競争
『ぎ、ぎゃあぁああああ』
「な、何やっ」
―…私たちは今、スケートに来ています。
「おま、でけへんねやったら、何でスケート行く言うたんや」
後頭部を軽く小突かれ、それだけで足元がふらふらと危うくなる私。
『で、出来ると思ったんだもん』
「テレビでフィギュアスケートの大会が映し出されていて、あまりにも簡単に滑っているものだから、滑るくらいなら私にもできると思った。
―……とか言う感じやろ」
『う…』
図星を言い当てられて、返す言葉もなく唇を尖らせる。
『な、なんで真子はできるの!?』
雪国育ちじゃないくせに!とキィキィ文句を言うけど。
「俺サマの運動神経の良さやな」
と、勝ち誇ったように笑われて終わる。
可笑しい。私だって運動神経は悪くないのに。
ましてや、ローラーブレードとか得意だったし。
「もう危ないから、やめとこか?」
『絶っっっっ対、やめない!!』
「おー、おー、負けず嫌いが」
負けず嫌い魂に火がついて、私は壁に手をつけながらゆっくりと足を前へと滑らせる。
私が他人のアドバイスを聞くのも嫌!ってくらい頑固な負けず嫌いだということを知っている真子は、私に何も言わない。
何も言わないで見守るように私の数メートル後ろからついてきてくれてる。
( 前傾姿勢すぎるのも、バランスが取れない要因よね、きっと )
倒れることを恐れて、前傾姿勢になりすぎている自分の姿勢を見直し、ぐっと背筋を伸ばした瞬間。
『う、うぎゃぁああっ』
ツルッと、恐ろしい程綺麗にかかとが滑って背中から倒れる。
視線が段々氷から空へと変わっていく。
「おっと」
『?!』
痛みに備えて体を固くしていた私に、痛みや衝撃はなく。
知っている香りにと温もりに包まれているだけだった。
『何で助けるのよ』
「阿呆、俺が傍に居てるのになまえが怪我すんのが一番嫌やねん」
ほんまはもう止めさせたいわ。と、呆れ気味にため息を吐く真子。
「まァ、負けず嫌いのお前に何言うても聞かんやろし」
それだけ言うと、真子は私が体勢を戻すのを支えてくれた。
「怪我だけはさせたないから、支えるくらい我慢しィ」
そう言って真子は私の右手を取って。
ゆっくりとしたスピードで滑り出す。
それに引かれるように、私も滑り出す。
手をつないでいる安心感と安定感で、自然と私も足を前に出す。
転びそうになるたび、真子が手を強く引いてくれるから。
私はその手にすべてを預けた。
(そろそろ手ェ離すでェ)(い、嫌!だめだめ!まだ離さないで!離さないでね!聞いてる!?)
狐vsオカッパ萌競争。
〜平子編
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どこぞのお父さんの気分や…。
(優しい平子萌え)
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