おかっぱ vs 銀きつね 萌え競争
「ああ、雨降ってきよった」
『うわ、本当だ』
頬に当たる、水の感触。
嫌な予感、と私は空を仰ぎ、隣にいた真子は下を向いて地面に雨の跡ができたのを確認する。
「取敢えず、雨足酷なる前に走るで」
『よっしゃ、バッチコーイ』
と、二人駆け出したはいいけども。
「ぎゃあああああ」
雨粒は途端に大きくなり、50mちょっと走ったところで引き返さざるを得なくなった。
『真子のあほー』
「なんで俺やねん」
『真子が走ろうって言ったんじゃん!』
「しゃァかて、走ることに同意したんやからなまえも同罪や阿呆」
とか言い合いながら、真子は羽織っていた芥子色のカーディガンを脱いだ。
抹茶と茶色のタータンチェック柄のシャツのみになる真子。
『うぇ、寒そう』
濡れた体に、雨が降りだして体感温度がガクンと下がったはず。
「濡れた衣服着とった方が体温下がるやんけ。それにヒー●テック着とるから大丈夫や」
そう言って真子はそのカーディガンを私の頭に被せ、ズボンなどの水をはらえるだけはらった。
「―…何や、なまえ。逮捕された奴みたァになっとるで」
そう言って私をみてケラケラと笑う真子。
窓ガラスに映った私は、確かに顔がわからないように上着を被せられた容疑者みたいになっていた。
『私が捕まるとしたら、完全に真子の濡れ衣だと思うの』
「何でお前はすぐに俺を犯罪者にすんねん」
『痛いッ』
べしっと額をはたかれ、眉間に皺を寄せながら叩かれたところをさすった。
「まァ、もしもお前がほんまに捕まったら、俺が助けたるわ」
そう言って不敵に笑うから。
それこそ犯罪だよ。なんてツッコミ、入れるの忘れてしまう。
『そしたら、真子を代わりに牢屋に閉じ込めて私だけ助かる』
「お前はほんまに可愛げがないのォ」
照れ隠しにそう言えば、わざと顎を突き出して、呆れたような表情を見せる真子。
『ま、真子にそんな度胸あるとは思わないけどね』
そう言ってふふん、と鼻で笑えば。
「阿呆。好きな女助けられへんかったら笑いものやんけ。見てろ、絶対助けたるからな」
片方の口角だけ上げてにやり笑って見せる真子。
真子の大きい手のひらに髪の毛がぐしゃぐしゃになるまで撫で回された。
その、大きな手なら、本当に助けてくれる気がした。
(そもそも、何私捕まる前提の話してるの)(お前ドジやから何もしてへんのに捕まりそうやん)
狐vsオカッパ萌競争。
〜平子編
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罪を被ってでも、お前を助けたい。
(頼りになる平子萌え)
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