おかっぱ vs 銀きつね 萌え競争




 










( ……どう考えても、この距離感は可笑しい )


ジト目で見つめる先にあるのは、華奢だけど大きくて骨ばった手。
でも、それは2.5mは先にある。歩数で言ったら、人によるけど大体三歩から四歩くらい。

今日の空は雲がないくらいよく晴れてて、冬だけど背中に当たる陽がぽかぽか暖かい。


―…散歩しよか。


そう言って私を連れ出したのは私の彼氏サマ、ギンなのに。
ギンは手を繋ぐどころか、私の隣を歩くでもなく、歩幅を合わせるのでもなく。

唯々、ゆっくりと歩きながら


「良え天気やね」


そう言ってにんまり笑うだけで。
普段は私の隣を歩いて、私の指にあの細く長い指を絡ませてくれるのに、今日はしてくれない。



( なんか淋しいのは、私だけなのかな )


そう思うと悔しくて。
頬を膨らませてみせるけど、私の前にあるのは大きな背中だけ。
私のふくれっ面なんて、ギンからは見えない。


たまには私から行動しろってこと?

色々思考を巡らせて、たどり着いた答え。
あのにんまり顔は、何か企んでるとき。
悪戯を考えてるときとかの、子どもみたいな顔。


ギンの企みに嵌るのはなんだか負けた気分だけど。
それでも、折角天気の良い休日だし。
温もりが離れてるのは寂しいし。
など、様々な口実を無理やりくっつけて、ギンの隣まで小走りで距離を縮める。


「―…ん、どないしたの?」


すべてを見透かしたような笑顔に若干腹が立ったけど。
捨てきれない恥じらいと共に、ゆっくりと手を差し伸べた。


『手、繋いで』


不本意なんだから。という雰囲気を醸し出しながら唇を尖らせる。
すると苦笑気味にギンは私の指に自分の指を絡めてくれた。


ギンが繋いでくれた右手を、ぐいっと引っ張られて思わず顔を上げる。
そこにあったのはにんまり顔ではなく、口角を上げた不敵な笑顔。


「手。繋ぐだけで良えの?」


唇が僅かに触れそうで触れない。
吐息だけが触れる距離に、心臓がフル活動して。
血液の循環が良すぎて、頬が紅潮する。



何も言えずに赤面する私を見て、不敵に笑ったギン。


「ボクの勝ち」


そう言って微かに私の唇を、ギンの唇が掠めた。






(ギンのばかばか///)(良えやん、たまには虐めても)
vsオカッパ萌競争。
〜市丸編

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優しくするだけやったら、誰でもできる


(意地悪なギン萌え)







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