恋心電波




『たーいちょッ』
「何や、なまえちゃんやない」


動揺をひた隠しにして、笑顔を取り繕う。
いきなり視界に現れた、愛しき君。

茶色の髪を揺らす君。
微笑む君。


隊首席に座るボクとの距離は、僅か五センチ。


『これ、判子下さいッ』


そう言ってボクに書類を差し出す。


「ああ、ほなこれで」


ポン、と判子を押せば、明るく笑ってお礼を言うなまえちゃん。
その足で、その書類を配達しに行った。

君を好きになって
もうどのくらい経つのやろ。

君との心の距離は、100キロ圏内。

電波はまあまあ。

体の距離は、五センチ圏内。

電波は三本。


『そいででしゅねェー…』
「なまえちゃん、呑み過ぎや」
『うるしゃーいッ』


ベロンベロンに酔っ払ったなまえちゃん。
白い顔を真っ赤にして。
酒を煽るその姿は、もういっそ男らしくてスッキリする。








「…で、結局こうなる訳や」


背中に感じる温もり。
腕に感じるなまえちゃんの重み。

歩く事も儘ならない程に酔っ払ったなまえちゃんをおぶって、夜道を歩く。
耳に拭きかかる、なまえちゃんの温かい息。

体の距離は、ゼロセンチ。
君は眠っとるから、電波はゼロ。



好きや。



て、言うたらどうなるんやろうか。
心の距離は縮まる?

ボクには良ォ分からへん。
君が好きや。

無防備に眠る君。
耳に掛かる寝息。
香るシャンプー。

無意識のゼロセンチに完敗。






恋心電波
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何処に行ったら圏外になるんやろ。


(好きな人に振り回される市丸さん萌え)

11.05.04.19:47


 

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